『LA INTERNATIONAL』 2003.01月号
第二回 気功パワーと密教治療術 藤原肇(フリーランス・ジャーナリスト)
佐藤法t(真言宗神道派大本山宝珠院住職) 天頂の北斗七星の啓示 佐藤 トルコから日本に帰ってくる時のことですが、向こうの時間で3時20分に乗って、一時間もするとモスクワ上空に着くので、その少し手前で夕日が沈み始めます。そして、飛行機の上での日没はとても早く終わり、夜空になると一面に星が輝き出して、東京までの11時間はずっと北斗七星が見えます。一等には他のお客も少なかったから、客室の電気を消してもらいまして、私はそれから眠らずに窓の外を眺め続け、北極星と北斗七星を眺めていましたが、吸い込まれていくような感じが強烈でした。
藤原 七は数学的には一から九までで最大の素数で、七角形はどうにも扱いづらい図形だが、佐藤さんにとっては図形より占星術的に、何だか因縁がありそうな感じがします。七は曜日の数で古代の占星術でいえば、水金火木土の惑星に日月を加えたものだし、七は三と四を足した数字であり、三角形と四角形の組み合わせから成る。正三角形を重ね合わせるとヘクサゴン(六角形)が作れ、正方形をずらして重ねると八角形になり、幾何学的な意味が読み取れそうな感じで、その辺がメッセージの核心でしょう。 佐藤 北斗七星だから占星術に関係があるとすれば、なぜあの時に合計で七つの流星が現れたかで、その辺に不思議な感じが残っています。 藤原 北極星は、道教では天の中心だから、すべての星は太白の周りを回転していて、それが調和と秩序を現すと考えられています。だから、調和や秩序から逸脱すれば流星になり、弧を描いて天空から姿を消す運命にあるし、全ての星が北極星を中心に運動することは、渦を巻いているということを意味しています。
佐藤 それもあったかも知れないという気がします。普通だったら時差ぼけや旅行疲れで、何日か体の調子が狂って当然なのに、今回は何もなく元気一杯で不思議なほどです。帰ってきてから凄いパワーが体内に漲って、山形に行って帰って北海道に飛んでから、東京にちょっと立ち寄って山形に行き、患者の治療をして昨日の晩に戻って来た。そして、今日からは東京の治療に取りかかり、何人も患者さんを治療して、先刻までリュウマチで手が動かない人に、パワーをかけたのですが、手をかざしてあげたら動くようになりました。
藤原 それは、結構でした。北極星の威力のお陰だったら、これはまた大変凄いことです。
佐藤 北極星の持つパワーもあったでしょうが、もう一つ考えられるのは腕にはめた瑠璃の数珠で、先ほどもこのことを話題にしましたが、神聖な仕事に従事するのにいいといって、昔から宗教関係者が愛用していまして、私も好きで長年にわたり身につけてます。 藤原 ラピスラズリはゼオライトに似た八面体構造で、ナトリウムとカリウムを含む珪酸塩鉱物だが、水の代わりに硫酸塩を含んでいます。漢字では瑠璃と書いて水晶に似た反射をし、細密充填構造の緻密な立体構造をしていて、七宝としてブローチを作ったりするから、案外われわれの身辺にあるということになる。少し色としては淡い藍緑がかっているが、トルコ石と間違える人もいるが、トルコ石は銅を含んでいる点が違っています。
佐藤 その孔雀石の粉はエジプトではアイシャドウに使い、古代のエジプトでは目病の予防のために、銅の持つ殺菌作用を活用したのだそうです。 藤原 学生だった頃に日立鉱山で実習があり、カンテラをつけて坑内に潜りましたが、マラカイトがヘッドライトの光に輝いて、実に美しいと思ったことがあります。話が元に戻りますが、どうして仏教関係者はラピスを特に好むのですか。 佐藤 インドの近くに石の原産地があるのと、瑠璃を体につけているとエネルギーが溜り、体につけて動くと気の渦が流れまして、一種の神通力が発生するようです。気の力を念力と名付けることもできますが、今回トルコではこの念力を使って治療し、カッパドキアでは大体200名ほど、イスタンブールでは25名ほど治療しました。イスタンブールの患者はインテリばかりであり、念力など全く信じるタイプではないのに、それが面白いように皆が信じてくれ、気功の威力を納得したようです。ことによると、気功というものが分からないのかも知れないが、皆が奇跡だと行って簡単に信じたのです。 藤原 そうですか。ラピスラズリを腕にはめてやれば、気功の威力が増大するというのは初耳だが、佐藤さんが自らの体験を通じて、そう確認しているのなら本当でしょう。また、浄瑠璃という言葉の中に瑠璃が含まれているが、浄い瑠璃という意味からして宗教的だから、きっとラピスに関係が深いのでしょう。 佐藤 浄瑠璃といった言葉は浄瑠璃姫の物語に由来し、中世に念仏法師が全国を語り歩いて、それが傀儡師の操り人形と組み合わさり、浄瑠璃として芸能になったようです.それに、浄瑠璃という言葉自体は薬師如来に結び付き、薬師様は東方の浄瑠璃浄上に住んでいて、大医王とも呼ばれている仏様です。
藤原 薬師様と浄瑠璃浄土が東方にあって、病気を治して健康を司るという説明が閃きをもたらし、なぜラピスラズリが不思議な秘力を持つか、理由が分かったように思えるのです。
佐藤 お釈迦様は密教では大日如来であり、大日如来は薬師如来の姿で治療して、病気で苦しんでいる者を救済するのです。 藤原 医師のように治療行為をしている時には、日光と月光の光の威力を使うことで、佐藤さんのように気の力で生命力を高め、患者を元気にするというわけですね。
佐藤 相手に気付かれずに気を動かすことは簡単で、目の前でちょっと手を動かせばよく、煙草の味を良くするのも悪くするのも、指を使って渦を描くだけでやれます。それは煙草のニコチンをなくすのではなく、ちょっと気を入れると味が変わってしまい、反対に渦を描くと元に戻るわけです。あるいは、酸っぱさや甘さに関しても同じで、気を入れて右回りに手を回すと、たちまち味が変わって素晴らしくなる。
藤原 ところが、私は普通の人のように右巻きではなく、全てが左巻きでなりたっているらしいのです。 佐藤 左巻きというのは、どういうことですか。 藤原 それでは聞きますが、佐藤さんのタマはどちらが下にありますか。 佐藤 タマというとブララ下がっている奴ですか。ええと、ちょっと待って下さい。そうですね、左が下です。 藤原 左が下ならあなたは右巻き人間です。人間というか男の95%が右巻きであり、それが世の中のマジョリティなんです。ところが、私はマイノリティの左巻きなのです。 佐藤 へえ、そうですか。そんなことは初めて聞きましたね。 藤原 だから、左巻きの人間は少数者に属しており、知恵が足りないバカというわけではなく、他人に従わないから仲間外れにされ、苛められる可能性がとても多いのです。私のタマは右(※注:『LA INTERNATIONAL』2003年1月号では“左”と印刷してあるが、藤原さんの話によれば右が正しい)の方が下がっていまして、上のタマから下のタマを弧で結んで、ペニスの軸にしてスパイラルを描くと、反時計回り(左巻き)の蔓になります。
佐藤 そうでしたか。知らなかったのでビックリしたけれど、これは大変いいことを聞いたので、患者を一人一人調べたら面白そうですね。 藤原 昔は旋毛や指紋の渦の巻き方とか、心臓の位置でスパイラルの問題を考えたが、どうも決め手になるものが欠けていて、絶対だと言い切れない面がありました。
佐藤 キリストは心臓が右側についていたのですか、それも今まで知らなかったことだが、どうやって右側だったと分かるのですか。 藤原 キリストがゴルゴダの丘で磔刑になり、ローマの兵士にロンジヌスの槍で刺殺されて、脇腹から血が噴き出しているのだが、昔からどの画家の描いた礫の絵も、全て身体の右側の心臓から血が噴出しています。どうしてキリストの心臓の位置に関して、ピラトが知っていたのかは分からないが、全ての絵が右の心臓に傷口があります。 佐藤 それは実に興味深い指摘ですね。ことによると、キリスト教では聖人の体に対して、何か特別な決めごとか配慮があり、普通の人と反対に考えるのかも知れない。
藤原 地球上の生命のレベルは右巻きが普通で太陽系になると左巻きが普通になるのであり、その上の次元では右巻きになるという関係が、無限に続いて秩序が成り立っていきます。だから、昔の人は聖人は心臓が反対にあると考えて、キリストの絵を描いたのかも知れないが、お釈迦様や仏像の場合はどうなっているんでしょう? 佐藤 多分あるのだろうと思いますが、具体的ないい例が思い浮かばないけれども、生命のエネルギーを象徴すると言われている、神社の注連縄の巻き方には意味があるでしょう。古代人は植物の蔓の巻き方や葉の出方とか、貝殻の巻き方に生命力を感じて、それを渦巻き模様にしたと言われており、縄自体が捻れて渦を巻いたものであるし、縄文式の土器や銅鐸の模様の中には、渦を使ったものがたくさんあります。そう言ったものを調べることにより、面白い例がいろいろと分かることでしょう。 藤原 流れや渦巻の持つ形態学的なものについては、「身体と宇宙」(亜紀書房)や「宇宙巡礼」(東明社)などで出した著書で、かなり詳しく論じたことがありまして、アイルランドや中国の遺跡の渦巻き模様とか、アリゾナの岩山の彫刻を考察した。
佐藤 金剛マンダラは理知の世界を現しており、これは「金剛頂経」に基づいて描かれていて、井桁になった九つの格子の中央に位置した、成身界が即身成仏を意味しているのです。だから、成身界に向かって右下から渦を巻く、反時計回りの渦を向上門と呼び、中央から右下に時計回りに拡散する渦に対して、向下門という名前を付けて呼んでいます。 藤原 三角錐を描いて頂点に大日如来を置くと、頂点に向かって登る左巻きの渦が向上門で、頂点から右巻きで降りる渦が向下門であり、渦巻は対数螺旋で次元の移動をしていて、各次元の場が正方形か六角形です。だから、胎蔵界マンダラは段階状になっていて、それぞれの次元の間が開いているので、五層の五重塔になっているそうですね。 佐藤 五層は単純な形では五重塔であり、宇宙を構成する地、水、火、風、空を現し、これが五重塔の基本になっているそうです。その最上部にあるのが五層目の中台八葉院でして、胎蔵界マンダラの中心の中台八葉院には、四方八方を照らす大日如来を中心に、仏の慈悲の光があまねく広がっている。 藤原 光は渦巻きになって世界を包むのでしょうね。 佐藤 きっとそうでしょう。四国の八十八ヶ所を巡礼として歩く時には、遍路として時計回りに歩くことになっているから、渦巻には重要な意味があるはずです。それに、印契を結んで智拳印を作るときには、胸の前でエネルギーが渦を巻き、その力が物凄い威力を発揮する。
藤原 その印契の形には螺旋構造が組み込まれ、指の形が一種のコイルになっていて、両手の指を使って磁場を作ることにより、エネルギーの結界が出来るのだそうです。これは読者からの受売りの知識ですが、北海道に住む読者に熱心な人がいて、彼は「間脳幻想」(東興書院)を五十度以上も読んでおり、興味深いアドバイスをしてくれる。そして、私が訪日すると飛行機で飛んでくる上に、神社やお寺に案内して説明したり、アメリカに何時間も電話をかけて来て、新発見やいろんなことを教えてくれる。さっきのタマのどちら側が下かというチェックも、その人から教えて貰った。 佐藤 そんなに熱心な読者を持っていることは、何にも増して素晴らしいことであり、それは財産として大事にすべき人ですよ。 藤原 その人は比叡山をアジャリから破門されて、北海道をやるから本州に現れるなと宣告され、大雪山圭水と名乗って風水師をやり、一種の山伏みたいなことをしている。実は、先刻のタマの巻き方もこの人からの伝授で、その他にも本に書いていない秘伝に関して、親切に手ほどきをしてくれる。
佐藤 面白い話ですね。 藤原 東京生まれなのに知らなかったのですが、そこは昔の大蔵省の造幣局か何かの跡地で、首塚の社の正面が西向きなのを指して、「この方角は90度ほど狂っている。本当の正面は南だから、北面に向かって拝んで下さい」と言われた。 佐藤 間違いないですね。で何歳くらいの人ですか。 藤原 50歳くらいだと思います。また、月と太陽に関していろんな研究をしていて、正午を中心に一時間前が仏様の時間であり、一時間後が神様の時間だという具合に、祈りについての時刻の持つ意味を説明や、手を使って印契で渦を作ったりして、驚くような秘伝を教えてくれたりする。 佐藤 先ほど、ちょっと山伏みたいだと言いましたが、ことによると比叡山系の修行をした人で、陰陽道に精通した人のような感じですね。 藤原 そのようであり、晴明流の風水師だと言っていまして、四柱推命とか方位についてお詳しい。そして、日本は方角が滅茶苦茶に狂っており、最も大事な右と左が支離滅裂になっていて、そのために平成幕末が危機的だといって、右回りと左回りについて仕込んでくれました。数年ほど前に書いた「平成幕末のダイアグノシス」の中で、現在の日本が幕末現象を呈しており、政治的な無能のために亡国化が著しい原因について、その理由を歴史分析で明らかにした。
佐藤 それは間違いな。脊椎は人間にとって大黒柱のようなもので、ここは骨髄と脳髄の二つを司る最重要な器官です。骨髄は血球を作って血液に関係しているし、脳髄は人間を人間たらしめる中枢だから、これが歪めばとんでも無いことになります。なにしろ、脊椎は頂点に位置している脳と共に、全身の神経系統の根幹になっているから、ここがおかしくなると神経全体の機能が狂い、精神作用が全部パアになってしまう。 藤原 だから、「平成幕末のダイアグノシス」(東明社)を書いた時に、英語の題名にカタレプシー(神経硬直症)を宛てましたが、漢字で現すと硬劣腐死ということです。脳がおかしくなれば人間としてアウトだが、国家の頭脳中枢がダメになってしまったら、これはどうにも救い難くてお手上げで、〔国破れて山河なし〕になって亡国です。 佐藤 その通りですね。なにしろ、「腎は精を蔵し、髄を生み、脳を充たし、骨を養う」といって、骨や脳髄は腎気によってコントロールされており、先天の気が宿っている腎の影響力は、人間の生命活動のほとんどを網羅しています。東洋医学の腎と西洋医学の腎臓とでは、東洋医学の腎はホルモンまで含むので、意味するものが少し違っているが、免疫に関してのホルモンの役目を考えれば、腎が生命力を活性化しているのです。 藤原 生命力が衰えれば自然治癒力も出て来ない。 佐藤 その通りです。幾ら強調してもし過ぎることがないほど、腎は生命にとって最も重要な臓器であり、両親から受ける先天の気によって、積極性や強靱な意思を支配している。また、呼吸作用の吸う息を司っていますから、吸気が弱ると集中力や根気がなくなるし、五臓六腑の活動で得るエネルギーは、いったん腎に貯えられて精になるのです。しかも、「腎は二陰に通じる」とも言われており、二陰には排尿と生殖を司っている前陰と、排便機能を担当している後陰があって、精力が枯渇することを腎虚と言います。 藤原 吸気が弱れば腹式呼吸が出来なくなり、酸素や栄養が脳に送る率が悪くなって、元気がなくなり病人同然になってしまう。それに加えて腎虚にまでなってしまえば、生きているだけが精一杯ということで、病気に対しての抵抗力も無くなりますね。 佐藤 交感神経と副交感神経の均衡が取れて、自律神経がきちんと機能している限り、ストレスにも負けないで元気にやれるのに、腎臓がダメだと健康維持がとても難しい。そこで気を流して体液の流れを促進させ、側面から腎臓の機能を強化するために、心の統一のためにお経を読むのに並行して、臍の神闕というツボに気を入れるのです。このツボは生理活動を統括するところであり、「神」、「気」、「精」の三宝を総合した状態で生命力を高めるのです。 藤原 でも気の流れは強い方から弱い方に向かうにしても、相互的な流れとして見た場合に、悪いものも流れ込んでくるはずです。だから、悪質な病気で生命力が低い人を治療して、佐藤さんが患者に気を注入する時に、場合によって精気を吸い取られてしまい、あなたがガタガタになることもあるでしょう。
佐藤 それはかってよく体験したことであり、過度の気の放出により起こることだし、嫌だなと思ったりするとくたびれるから、そんな場合やガン患者の時は自然の力を使い、大きな木を見つけて助けを借りるのです。 藤原 木の助けを借りるというどういうことですか。 佐藤 参考までにいい例を紹介しますと、近くのビルにある会社の社長の夫人で、悪質の肺癌になって困っていた人ですが、玄関の前に古い銀杏の樹が二本あったので、そのうちの一本に手を当てて貰ったら、奇跡が起きた。
藤原 そんな奇跡的なことがあるのですか。それにしても面白いですね。 佐藤 本人もびっくり仰天してしまいましたが、奥さんはすっかり元気になってしまって、そこで水天宮様でお祓いをしてもらい、後は私が土砂加持をしてお浄めしました。
藤原 もう一本の方の銀杏の木は何ともなくて、堂々とした大木がとつぜん枯れたのなら、これは寿命というわけには行かないですね。 佐藤 社長は信じられないと言って植木屋を呼び、枯れた木を切ったら真ん中が死んでいて、隣の樹の方も枝を切って見たが何ともなく、考えられないと首を傾げていました。
藤原 理由が分からなくても病気が治るのなら、こんな結構なことは無いと言えるし、木の木目は水が炭水化物として固定して、一種の渦流の構造を作ったものだから、その渦が悪い気を運んで消したのでしょう。
佐藤 病気の大半は体が冷え切っているせいで、冷たい飲み物の取り過ぎが原因になっていて、本当は暖かい飲み物を取ればいいのです。ガン細胞も高い温度では分裂が鈍ってしまい、常温42度で人間を温熱療法することで、ガン細胞はどんどん消えていきます。 藤原 そのように言いますね。だから、ガンになった人はサウナに入るといいし、風邪を引いた時にもウィルスを抑えるので、サウナがいいことは体験的に知っています。私もくしゃみが出て風邪を引いたと思えば、サウナに入って汗をかくと治ってしまいます。 佐藤 変わり者だが日本で第一人者の先生が、昔から温熱療法が最も体にはいいといって、熱い風呂に入ることを患者に勧めているが、どうせなら地の気が出ている温泉がいいと、私は温泉に湯治に行くようにアドバイスしてます。 藤原 温泉は地球の内部から上昇した水が、地熱で暖まって温度が高くなっただけでなく、いろんなミネラルを溶かし込んでいるので、それが芯底から体を温めてくれます。
佐藤 だから、昔から風呂は百薬の長だといっています。 藤原 神田の末広町に白湯という銭湯があり、石膏質の湯の花を混ぜているので、硫黄分が効いて体が芯から温まります。だから、老人たちが朝湯を楽しむことで有名だが、芯から体を温めると風邪を引かないし、自然治癒力が高まって健康にいい。 佐藤 私の山形のお寺にも蔵王の温泉があり、火山のお陰で湧き出したお湯だから、体の芯から温まる有り難い地の恵みです。温泉につかってから1600米の所まで登り、真冬で氷が張っている泉の中に飛び込んで、冷たい水を浴びると血管が収縮して、身体が本当に火照る感じで風邪も引きません。 藤原 暖め方に酸化と還元の問題があり、一番いいのは先ず弱アルカリ泉に入って、体内の水素イオンを皮膚の外に引き出し、次に弱い酸性の湯で濯ぎ洗いをすれば、腹式呼吸で酸素を取り込むのと、同じ効果があります。
佐藤 要するに調和で均衡を取るのであり、一方だけに偏しないことが大切です。厳冬に水を浴びると皆が「先生、風邪を引きますよ」と心配してくれるが、こうやっているから冬でも風邪を引かないのに、それが大部分の人には分からないのです。 藤原 これも風水師の大雪山さんからの伝授だが、温泉と同じ効果を簡単に作る方法として、花崩岩や氷晶をクエン酸の溶液で煮出し、それを風呂にコップ一杯分混ぜて入るのです。そうすると温泉に行ったのと同じ効果で、生命力がものすごく高まるそうだが、良く考えてみると成るほどと分かります。
佐藤 それは血の浄化と密接に関係しており、血がきれいになると生命力が高まるのです。講演などの時によく言っているのですが、日本の社会がどうして崩れてきたかは、池田内閣の高度経済成長路線によって河川が汚れ、その後ずっと日本の動脈を汚染し続け、国土の生命力を損なって来たのだから、慢性病と同じで亡国現象を促進したのです。これは人問でも国土でも同じことであり、血の汚れは精神や気の汚染と同じです。 藤原 汚れや恥じに対しての感受性が低下して、日本人の精神的なポテンシャルが衰えたので、社会全体がガタガタになってしまい、連帯感が全く喪失したのは致命的だった。日本は高度成長路線を推進したことによって、重工業の発達で経済的な面に力を入れ過ぎたために、国土の自然を荒廃させてしまった。 佐藤 社会が連帯感を失ってダメになった上に、池田内閣以来の日本人は個人の気力も低下し、慢性疾息に悩む人がどんどん増えました。河川は人間に喩えると血液が流れる血管であり、ドブ川のように血液に汚れがあれば、全身にその汚れが流れることになる。そして、「万病一毒」といって万の病は血液の汚れであり、日本中の河川の汚れが目立つようになったら、成人病だけでなく奇病や難病が激増した。 藤原 痛いイタイ病や水俣病などで苦しむ息者が、水や空気の汚れで日本の各地で報告され、公害が社会問題として取り上げられた時代でした。 佐藤 昔から、病は四百四病と言われてきたが、1960(昭35)年を境にして慢性病が増え、多くの日本人が苦しむようになり、その中に色素変性網膜症画というのがあります。視野の内側が見えなくなる奇病でして、外側だけしか見えないので難病に指定され、38歳の時からこの病気に懸かった人で20年間も苦しんでいた患者がいますが、この人が私の所に治療に来ました。 藤原 私の友人で視野の中央が縦に白くなり、その部分が空白になったので調べたら、脳の中に腫瘍ができて腫れていたので、それを切り取ったら治ったそうです。 佐藤 それは視神経に関係したものでして、東洋医学では目は肝臓に所属するので、解毒作用を司る肝臓が機能低下すれば、直ぐ目に影響が現れてくるのが普通です。だから、ある患者にこんな具合に質問してみた。
藤原 それはよかった。 佐藤 その患者は、20年近くも医者に通って治療を受けていたものだから「医者は自分が与えた薬が効いたと言ったそうだ。
藤原 高度成長路線の行き過ぎによって、日本の自然が乱開発で汚染されたために、生活環境が滅茶苦茶に破壊されたと気付き、それにストップをかける運動が盛り上がり、河川や海の汚染が緩和されるまでには、20年近くもの時間が必要だった。
佐藤 その次に今度は何が出てきたかというと、豊かさのために生まれた食の問題であり、人間の体は自然と一体であることのために、季節のもの(旬の物)を食べれば自然治癒力が高まります。それは季節のものを摂取することにより、躰が元気でいることを教えているのです。 藤原 しかも、その土地で取れたものを食べることが肝要です。 佐藤 その通りです。身土不二といって身体は土地と一体であり、その土地で取れた食物は体に合っているから、自分が住んでいる地域を中心にして、約50キロから100キロの範囲内のものを食べていれば、健康にとって絶対にいいのです。 藤原 昔から身土不二は健康の決め手と言われ、日本人はそれを守った生活をして来たのに、最近の八百屋は季節感が乏しくなって、夏の食べ物のキュウリやトマトが年中あるし、野菜も中国やフイリッピンから来る。 佐藤 旬の野菜は、体の調子とバランスが取れていて、コレステロールの吸収を防ぐ働きのある玉ネギとか、カルシウムに富む豆類が初夏に出回る。また、秋野菜の代表にはサツマイモがあり、これは脂肪代謝を良くする作用があるし、体を冷やす葉野菜は夏の野菜に多くて、高温多湿の夏にむいているのです。
藤原 それに、砂糖やチョコレートなども加えれば、賛沢品は健康にとっての敵になるし、ガンは戦後になって急激に増えた病気です。 佐藤 ロシアのコーカサス地方は長寿で有名であり、老人が120歳や130歳になっても元気で働いたりダンスをしているそうです。そして、牛乳を飲んだりチーズをたべたりしているので、それが長寿の秘訣のように言われているが、実は湿度のないところで食べるからいいのであり、多湿の日本ではそれは合わないのです。 藤原 チーズやヨーグルトは土地と密着しており、その土地で食べれば本当の醍醐味だが、確かに、土地が変わると風味も大きく変化します。
佐藤 現在の栄養学は戦時中の考え方に基づき、カロリーの計算が中心になっていますが、これは食料の確保が困難だった時代の名残で、今の豊かな時代には余り役に立ちません。人間が生きたり働くのに必要なカロリーとして、最低限度のものを必要とした時代には、確かに熱量の計算は大事だったが、今は不足ではなく過剰が問題です, 藤原 それにバランスの取れた栄養の確保と、人工的な化学製品の混じっていない、自然でその土地で出来た食品を選んで、鮮度のいいものを食べることが決め手です。 佐藤 私は朝飯を食べずに一日一食主義でして、この習慣はほぼ30年間も続いているし、昼と夜はちょっと食べる程度で、睡眠時間は3時間から4時間くらいです。
藤原 目で見え数量で現れるものを数えて、それで健康の維持になると思っているが、これはとんでもない事実の見誤りです。例えば酸素は目に見えないが重要であり、腹式式呼吸で横隔膜を使い深く吸いこめば、粒の小さな空気の泡が腸で養分を吸収し、脳に大量の酸素と栄養を補給する。
佐藤 そうですね。 藤原 質のいいものなら量は少しで良いし、目に見えなくても大事なものが多いのに、どうしても見えるもので判断してしまう。 佐藤 そういうことです。私が山形のお寺で世話をする若い者で、蔵王に連れていく時に較べてみると、朝飯を食べた者より食べない者の方が、耐久力の点では遙るかに強い。 藤原 そうでしょう。マラソンをやっている時に水を飲めば、途端にへばってしまうのと同じことで、ぎりぎりの所で底力が出てくるのです。 佐藤 そうです。朝飯を食べないといけないという思い込みは今の小学校教育にまで及んでいて、朝飯を抜くと貧血を起こすと思っている。ところが、腹一杯に食べると胃や腸が消化のために働き、胃腸に血液が集中するので脳に血が行かず、眠くなるし貧血を起こし易すくなる。 藤原 腹一杯食べて満腹感にひたる喜びは、貧しかった時代の名残があるのです。現在ではストレスの方がより問題であり、ストレスは万病の元になっています。 佐藤 ストレスが原因の皮膚病が増えているが、アトピーで悩んでいる人が非常に多くて、これをアレルギー疾患だとしています。
藤原 賢臓が弱っているのに水を多く飲むし、その悪循環によって体力が衰えて行くばかりで、免疫機能が低下するから病気になりやすい。そうなると弱り目に崇り目ですね。 佐藤 腎は生命の源だと既に論じましたが、腎機能が弱ると血液のホルモンの均衡が崩れ、内と外の境界である皮膚のバランスが狂い、アトピーなどのアレルギー症が出ます。
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