『財界 にっぽん』 2009.10月号



暴政が支配する日本に救いはあるか

ネオコン政権が日本を破滅に追いやった

国際ジャーナリスト 藤原肇
ジャーナリスト 猪野健治



日本の政治がいよいよ阿鼻叫喚状況を呈するに至って いる。本誌の長期連載「マスコミ批評119番」で 健筆を振るう猪野健治氏と、たびたび本誌で日本の政治 の暗部を鋭く批判してきた台湾在住の国際ジャーナリス トの藤原肇氏に、藤原氏の新著『さらば暴政』(清流出 版)を踏まえながら、日本の政治危機の深層と立て直す 可能性についてを語り合ってもらった。前号(9月号) に続いて、その第2弾をお届けする。(文中・敬省略)



新聞の経営危機の背景に押し紙と記者クラブ制度

猪野 新聞の経営を圧迫している 一つが、実売部数をごまかしてき た押し紙制度が機能しなくなって きた点です。販売店側が押し紙を 拒否するようになってきた。そう なると、折り込み広告料がダウン します。それに最近は、チラシ広 告を全戸配布するような会社も出 てきています。
 新聞販売店の裏に行くとわかり ますが、三日に一度ぐらい、押し 紙を回収するトラックが来ます。 回収される押し紙には折り込み広 告が入った,ままになっている。平 均して二、三割は押し紙だと言わ れています。ひどい店は四、五割、 押しつけられている。新聞社側は 余備紙と言ってますが、この押し 紙制度が崩れると、新聞はますま す経営危機になりますよ。

藤原 最近、日本の新聞を読むと、 安売り旅行業者の広告がやたら多 く、記事を読むぺージが少なくなっ てきたような印象を受けるが、そ れでは読者を失うのは当然です。 昔から言われているが、新聞記者 は記者クラブで提供された資料を 見て、記事をつくっているので、 どの新聞も似たような記事になっ て面白味がない。

猪野 警視庁には記者クラブが二 つあります。一つは共同通信、朝 日、読売、毎日、東京新聞など、 大手メディアが加盟する七社会、 もう一つがそれ以外のメディアの 警視庁記者クラブです。七社会に は以前、時事新報が入っていたが、 産経が買収して以来、実質六社に なっています。記者クラブの閉鎖 性の特徴です。
 最近は記者個人の自由な取材も 難しくなっている。記者クラブの メンバーの記者が、警視庁や管轄 の警察に独自の取材を行おうとす ると、警視庁の側から、「どうい う企画で取材するのか」と、逆に 訊かれたりするそうです。社とし ての企画ではない、自分で思いつ いた企画取材は難しくなっている。 いわばメディア側が管理されてい る。
 だいぶ前の話しですが、社内の 異動で新任記者が警視庁に来ると、 警視庁側から、「こんど来たのは、 学生時代、えらい元気だったらし いな」と言われたりする。学生時 代、学生運動をやっていた、とい う意味でね。そんなことは、その 社のキャップも知らんことですよ (笑)。本人が赴任する前に、マル 秘の個人情報が、警視庁側に漏れ ているらしい(笑)。こんなこと では警察にきびしいオリジナルな 企画など、立てるのは難かしい。

藤原 警察など役人たちが情報操 作して、メディアをコントロール というのはとんでもない越権行為 です。

猪野 警視庁は新聞の締め切りに 合わせて記者発表を行います。管 内で起こった主な事件がコピーし てある。
 記者クラブ側は輪番制でその日 の責任者を決めており、コピーを 配布し、記者発表に臨むわけです。 「何か質問ありますか」と問われ、 質問がなければそれで終わりです。 重大事件が起きて写真が必要な場 合、「これから鑑識が出発します。 同行したい社はどうぞ」などと広 報が流され、各社のカメラマンが あとを追う。
 財務省などもシステムは同じで すよ。まず記者会見発表に先立っ て、事務方が分厚いプリントを配 布します。
 記者側は読むのが面倒くさいの で、「ポイントをレクチャーして くれ」となる。そして、記者発表 の席でレクチャーされたものをも とに、記事を書く場合が多い。


ヨーロッパの高級紙はせいぜい四、五十万部

藤原 記者クラブ制度は、官僚に とっても、新聞社側にとっても都 合がいい。しかし、そういう馴れ 合いの記事を読まされる読者はた まらない。記者クラブ制度に安住 しているかぎり、日本のジャーナ リズムは死んだも同然ですよ。
 アメリカのジャーナリズムも、 かつては日本よりかなり質は高かっ たが、湾岸戦争のときに、国防省 が情報統制を行って以来、急に腰 砕けになりました。アメリカは日 本のような記者クラブはなく、き ちんと取材する記者やフリーラン サーもいるが、全体的に衰退は否 めません。シカゴトリビューンが 潰れ、その子会社のロサンゼルス タイムスもガタガタになっている し、ウォールストリート・ジャー ナルも乗っ取り屋のマードックに 支配されて、タブロイド化してし まいました。

猪野 ニューヨークタイムズも火 の車で大変でしょう。

藤原 そう。ニューヨークタイム ズは世界中に知られた、質の高い 新聞ですが、印刷部数はせいぜい 百万部です。一千万部からの発行 部数を誇るのは、世界中で日本、 中国、ロシアぐらいでしょう。朝 日新聞は六、七百万部ぐらいだが、 底辺の読者に合わせる限り記事の 質は自然に落ちるのです。ヨーロッ パの高級紙は読者の質を絞ってい るし、特定の読者に的を絞って記 事を編集するから、発行部数はせ いぜい三、四十万部ですよ。
 ヨーロッパの新聞の論調に比べ たら、ニューヨークタイムズの質 はガタ落ちします。星則私はニュー ヨークタイムズに原稿を送ったこ とがあるが、内容が難しすぎると 言われ、ボツになってしまいまし た。アメリカのメディアは平均し て、ヨーロッパよりレベルが低い。 『小泉純一郎と日本の病理」を英 訳し世界の読者向けに書き改めて、 アメリカの出版社に持ち込んだら 日本のことなど興味がないと三社 に断られました。
 そもそも、アメリカでは日本の 政治に対する関心が薄いし、最近 の日本は存在感が乏しくジャパン・ ナッシングが酷くて、四社目に 「日本研究者向けだ」と言われ、 ホッとしましたが、出版までに一 年以上かかると言われた。
 小泉が退陣する前に出さないと 意味がないから、台湾の友人に経 緯を話したところ、週七日で二十 四時間体制の突貫作業で、三カ月 で本に仕上げてくれました。私は その『ジャパンズ・ゾンビ・ポリ ティックス」と題する英文の本を 購入して、世界の七百校の大学図 書館に寄贈しましたが、日本語版 は妨害で読者が新本を買えず、古 本が定価の十五倍もしているよう です。日本の新聞では書評ゼロだっ たが、ヨーロッパの新聞は拙著を 引用しています。

猪野 ただヨーロッパの新聞も 「すべてよし」とはいかないです ね。先ごろ英国のデーリi・テレ グラフが通信社の原稿を流用した うえ、自社の署名記事にしていた という不祥事が英大衆紙に報道さ れた。
 ともかく藤原さんの本によって 世界の日本研究者は、小泉政治の 暗部を知り得たわけですね。

藤原 この本はハングル版も出て いるから、おそらく、金正日や家 庭教師の横田めぐみを恩師として 尊敬している金正雲も読んでいる かもしれません(笑)。ソウル大 学法学部では必読本になったそう で、アメリカで会ったソウル大学 出身の韓国人の留学生が「藤原さ んの本は読まされました」と言わ れて、驚いたことがあります。

猪野 小泉政治の本質について知 らないのは、ことによって日本人 だけかもしれませんね。

藤原 日本人は世界のことをよく 知っているつもりになっているが、 知っているのはサブカルチャーの 部分だけであって、本当に大事な 情報や、価値のあるものについて は知らない。日本のメディアは本 質的なことを報道しません。世界 の人たちが知っていて、日本人が 知らないことはいっぱいあります。 たとえば、朝日新聞は自己規制し て、中国の真実を書かなかったし、 サンケイなどはデマ情報の洪水で す。


フランス語ができない日のパリ支局長

猪野 日本の新聞社の特派員が海 外に派遣されると、真っ先に訪ね るのが現地の日本大使館で、その 次に訪ねるのが現地で活躍してい る日本の商社マンです。商社マン は直接現地人と接触しているから、 現地情報に通じている。そのあと 何をするかと言えば、現地の新聞 のお勉強です(笑)。海外特派員 の記事の多くはそれで成り立って いる。明らかに危険なところには 行くなという指示が、本社と組合 の両方から出ているから、危険地 域に生の情報を取りに行くことは ほとんどないです。危いところは たいてい外電でおぎなっている。
 昔のアメリカの新聞社は、たと えばベトナム戦争中、ベトナム史 を研究している若くてフットワー クの良い学者を、特派員として現 地に派遣しています。その学者は 現地語はぺらぺらだし、歴史にも 詳しいから、現地にどんどん入っ ていって生の話を聞き、ホットな 記事にするわけです。それに対し て、日本の特派員は、偲偏政権の 掲示板に貼り出す情報を流してい た。竹中労が現地へ行って報告し ている。例外は毎日の大森実さん くらいじゃないですか。

藤原 私がフランスに留学してい た頃に、グルノーブルで開かれた 冬季オリンピックに関わったこと があります。プレ五輪では、日本 代表としてリュージュの選手をや り、翌年はオリンピックのオフィ サーをやりました。そのとき、朝 日新聞から手伝ってくれと言われ、 パリ支局を訪ねたことがあります。 そして、支局長が何をしていたか と言えば、日本からの留学生が翻 訳した現地の新聞記事に赤線を引 き、それで記事をでっち上げて日 本に送っていました。取材をしな いどころか、フランス語ができな いのだから酷い人事ですよ。

猪野 日本のメディアの特派員に しろ、外務省の現地大使館、領事 館の職員にしろ、現地の関係者に 気に入られることばかり考えて、 自分が日本国の代理人だという自 覚が感じとれない。

藤原 いや、現地の人間に気に入 られるどころか、信用されない人 間が多いのです。
 岡崎久彦などはサウジアラビア 大使だった頃、仕事もろくにしな いで、「VOICE」誌に「陸奥 宗光伝」を連載していました。税 金を使って身内の宣伝に熱中して いたのです。私は以前サウジで仕 事をしたことがあり、サウジのトッ プから聞かされたのですが、「日 本の大使はけしからん」と憤慨し ていました。

猪野 岡崎大使は今も、小泉、安 倍などのブレーンとして振るまっ ていますね。

藤原 アラビア石油がサウジから 切られたのは、岡崎大使の愚行に 責任の一端があります。麻生も外 務大臣時代に日本の信用を旺めて います。というのは、マニラで外 相会議があったとき、麻生は刀を 差して侍の格好をして、「ちゃん ちきおけさ」なんかを歌っている のです。そういうことは外務大臣 のやることではないが、その映像 はユーチューブで全世界に配信さ れ、日本の評価を下げているのだ から国辱なのです。そんな男が世 襲代議士として首相になっている。 知らぬは日本人だけですよ。
 こんな外交感覚では国際レベル のコミュニケーションはできない し、仲間に入れてもらえません。 日本はODAで莫大なカネを出し ているが、外務省は世界からきち んと情報を取る能力はないし、日 本を国際社会にしっかりアピール することもしていない。鎖国をし ていた江戸末期の幕府に較べても、 劣っているというのでは本当に情 けない。

猪野 政府が改革と構するものは、 米側が示す「年次改革要望書」ど おりにやってきただけ。新会社法、 改正独禁法、郵政民営化みんなそ うです。
 麻生が首相になれたこと自体、 日本の政治の衰退を象徴している。 漢字の読み間違いなどに見る通り、 言葉が武器の政治家なのに、その 実態はひどいものです。


日本を不幸にした親ネオコン内閣

藤原 必勝と言うつもりで惜敗と 言ったり、漢字を読み間違えて小 学生に笑われて、日本語をろくに 知らない男が首相というのでは、 恐ろしくなる。自民党は、宮崎県 知事になった三流芸人のそのまん ま東に、「自民党総裁にしろ」な どと言われるところまで落ちぶれ、 その混迷ぶりは絶望的です。

猪野 あんな茶番が現実性のある 話として報道されること自体、異 常ですよ。

藤原 私に言わせれば、小池百合 子が総理・総裁候補に名前が出て くること自体が、憤飯もので異常 性を物語っている。三〇年も昔に 竹村健一のテレビ番組に幾度か出 たが、そのとき、スタジオで竹村 のアシスタントとして、コーヒー を出してくれたのが小池でした。 彼女の父親は中東で石油の権利漁 りをするブローカーで、統一教会 から選挙に出て落ちてカイロに夜 逃げして、日本レストランを開い ていたが、利権右翼の田中清玄の 使い走りみたいなことをしていた。
 あるとき、コーヒーを入れてく れた小池に、彼女がカイロ大学出 であることを承知の上で、「小池 さんはアズハリ大学を出たんだっ てね」とカマをかけてみた。アズ ハリ大学というのは、モスレムに とって最高のカイロの名門大学で す。彼女はさすがに驚いたとみえ て「藤原さんはなんでそんなにア ラブ世界に詳しいのですか」と目 を丸くしていました。私がグルノー ブル大学で地質学を修め、アラブ で石油コンサルタントをしている 男であることを、彼女はまったく 知らなかったのです。
 そんな彼女がその後、細川、小 沢、森、小泉にくっついて政界を 渡り歩き、遂に防衛大臣にまでなっ たことを知って、この国はどうなっ ちゃったんだろうと思いましたよ。

猪野 環境大臣としてクール・ビ ズの旗振りをやっているぐらいな らまだしも、防衛大臣はちょっ と:…も

藤原 ネオコンに利用されるのが 落ちであり、小泉以来ネオコンと つるんだことが、日本をいかに不 幸にしたか日本人は未だに気づい ていない。一時は一億総中流と思っ ていたのに、気がついてみるとほ とんどが下層階級で、奥さんがパー トに出ないと生活が維持できなく なった。また、収入が少なくて、 三十才過ぎても結婚できない若者 も増え、小泉がネオコンとつるん だことによって、日本をそうい う 酷い国になってしまった。

猪野 今回の不況で非正規雇用の 労働者が解雇され、途方に暮れて います。
 非正規雇用の労働者を、有無を 言わせず切り捨てる企業も企業だ が、それを「派遣切り」という言 葉で平然と報道するメディアもメディアです。これも小泉改革の負の遺産です。


完全に表面化していない金融商品による損失

藤原 日本の銀行は事実上は、正 直に言うと全部潰れています。三 菱東京UFJ銀行は、日本のメガ バンクではいちばん優秀だと言わ れているが、三兆数千億円という サブプライムに類する「紙切れ」 を持っており、それはまだ公表で きるレベルの話で、サブプライム による損失は全容が公表されてい ない。農林中金などは公表できる レベルで六兆円、実際は二十兆円 あるんじゃないかと、私の知人の 新聞記者が言っていた。

猪野 どの銀行も訳のわからない 金融派生商品をかかえている。

藤原 竹中は長銀に八兆円の税金 を投入して国有化したあとで、リッ プルウッドに十億円で叩き売った が、そのカネの流れや責任問題は うやむやです。そして、自民党は 政権交代が迫ってやけっぱちにな り、十五兆円の補正予算を組んで 大盤振る舞いしている。これはも う、敗戦直前の帝国陸軍がやった
 特攻隊の玉砕戦法よりひどい。 政権交代が起きたとき、責任を 感じて切腹する政治家が一人でも いるのかどうか。生れ故郷をこん な状態にされてしまって、神田生 まれの江戸っ子として怒りを感じ ます(笑)。
 郵貯の資金がどれだけアメリカ に流れているか、分かったもので はありませんよ。

猪野 でも、まだ郵政の株は政府 が100パーセント持っています から。

藤原 いや、郵貯や簡保の資金は 米国に投資しているはずですよ。 アメリカのTボンド(米財政省長 期債権)を買って、かなり損を出 しているんじゃないですか。

猪野 そういえば、慶応や駒沢大 など複数の大学も巨額の損を出し ていますよね。

藤原 表面化していないものが、 まだたくさんあると思います。と にかく、現在の日本を見ていると、 暴政ここに極まれりという感じで す。そのことを多くの人に知って もらいたいと思って、「暴政」と いう言葉はきつすぎると文句を言 われながら、『さらば暴政」の出 版にやっと漕ぎ着けました。
 ところで、猪野さんは「日本の 右翼」という著書もあり、右翼研 究の第一人者ですが、昨今の暴政 状況を目の前にして、自民党に対 して文句を言う右翼は存在しない のですか。

猪野 革新派右翼はすべて反自民 ですね。マスコミが報じないから みんな知らないだけです。ただそ の人が一言発すると、政界がぐら つくというような頭山満みたいな 人物は、もういませんね。

藤原 昔の右翼には志を持った国 士がたくさんいたが、志という字 は、「心を持った士」と書きます。 サムライがいなくなり、忙しく働 いているうちに心が荒廃したので、 右翼だけの問題ではなく、この日 本に志を持った人がいなくなった のは当然です。私は韓国へ行って 聞いてきたのだが、日本の右翼の 八割は韓国人だそうです。

猪野 そんなことを言ったら右翼 が怒りますよ。ただ数%の在日韓 国人がいることは確かです。現に 私はその人の葬儀委員長をしてお ります。

藤原 日本で右翼を名乗ると、以 前は尊敬されたから、半島出身者 は、それを利用しているようです。

猪野 今はまったく尊敬されな い。右翼イコールマル暴という受け止め方しかしない人が多いですから。


右翼も左翼もない憂国の士よ、出でよ

藤原 私は、最近の旧本では右翼 までが、一種のネオコンになって しまったという印象を持ちます。 つまり、拝金主義に感染してしまっ たということです。

猪野 筋のいい右翼もいますよ。 たとえば、一水会。

藤原 しかし、売文業をやってい ます。
 昔から「ゲスの世界においては、 女がやるのが売春で男がやるのが 売文だ」と言いますよ。(笑)

猪野 それは戦術の一つです。何 かをアピールする方便として、メ ディアに出始めたのが最初です。 今、一水会を率いている代表は、 木村三浩さん。慶応の大学院出身。 また、主なメンバーは大半が大卒 です。右翼の相当部分がイラク戦 争反対運動を展開した。木村さん の結婚式には駐日イラク大使が出 席しています。
 一水会の特徴は、講師に左翼を がんがん呼ぶことです。それも元 極左を。(笑)。

藤原 極左は極右とつながります からね(笑)。リニアで見ると正 反対ですが、円環状態で輪として 見るとつながる。だから昔でも、 武装共産党から転向した田中清玄 のような男が、右翼になって大化 けしています。

猪野 昔、老壮会という組織があ りました。そこは右も左も問わな い組織でした。だから、女性解放 運動のメンバーから、アナキスト、 右翼、そして軍人の将官クラスま で、文字どおり老から壮まで、憂 国の志を持った者が集まって、夕 方六時から夜遅くまで、論争して いました。老壮会のような、右翼 でも左翼でもない、真剣に国を憂 うる人間の集まりが、今の日本に ない。だから政治家や経営者が堕 落するわけです。

藤原 右翼や左翼という分け方は、 平面的で考え方が小さくてタコ壷 発想です。
 パーティというのはパートで部 分だから、私はナントカ党という のに関心がありません。志を持っ たスケールの大きい人間は、一つ の党に入らないのが当然であり、 勝海舟や坂本龍馬は党の枠をはみ 出していた。右翼にも左翼にも胸 襟を開く全翼的な立場で、この国 の暴政を正して行く真の指導者に よって、日本の未来は大きく変る と思います。

猪野 本日は多岐にわたるお話を、 どうもありがとうございました。 (七月四日・対談)


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