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「日本が斬られる」の出版経過
1 名前: 藤原肇 投稿日: 2003/05/21(水) 18:54
だいぶ昔のことで詳しい日時と経過を忘れていましたが、幸運にも「はじめに」と「おわりに」という記事があって、そこに経過についての記載が記録されているので、およそのことがかなり正確に復元出来そうです。「日本脱藩のすすめ」の出版が1980年8月であり、「日本が斬られる」の「はじめに」の所にこの対談が行われたのが、1980年の春であると書いてあることからして、春の訪日の後でアメリカに戻るときに母を伴って太平洋を渡り、お陰で滞米中の母がテープお越しを担当してくれ、それを編集している最中に「日本脱藩のすすめ」が上梓しました。真野出版局長が熱心に編集して下さっただけあって、「日本脱藩のすすめ」は多くの読者に歓迎されたようで、好評だという報せに励まされたこともあり、私は力を入れて「日本が斬られる」の編集をしたと記憶します。そして、秋に訪日した時にその原稿を真野さんに読んで貰ったら、二つ返事でこの本も続けて出すという吉報になりました。実は「本当の危機とは何か」というのが本来の題名でしたが、思うことがあってわざと「日本が斬られる」にしたのは、傍系の藤原である藤原弘達さんの「創価学会を斬る」を嚆矢にして、「ナントカを斬る」という題の本が洪水状態だったので、それに対してのアンチテーゼがこの題になりました。
直ぐに斬りまくるのは「生兵法」だと考えたからだし、誰が誰に何の理由で何時どこで斬られるかを考えるのが、読者に向けての問題提起になればいいと思ったのです。真野さんは「何だか分かったようでよく分からない、余りスッキリしない題名ですね」とぼやいていました。当時の私はアメリカで新しい会社を起こしたので、少壮事業家として少し調子に乗っていたので、不遜なことを内心で企んでいたと白状することが、現在の段階でしなければならない反省だと思います。というのは、それまでの私の本は初版が3000部くらいでも、ほぼ二年くらいで増刷りになるペースであり、固定した読者として2−3000人いるとしても、私の本なら無条件で入手するという熱烈な人が、果たしてどれくらいいるか知りたいという、実に生意気なことを考える精神状態だったようです。そこで出版にあたって私の側から条件をつけて、まず、表紙のデザインは出来るだけ野暮ったいものにし、定価は2000円かそれを少し下回るくらいで、その線でこの本を出版して欲しいと言ったのです。当時は本の値段は1000円が一つの目安で、「日本脱藩のすすめ」でも980円の定価だったから、倍の値段をつけて欲しいという私の申し入れは、全くの気違い沙汰だという印象を与えたようです。
真野さんは高くても1200円しか付けられないと言い、私はどうしても1500円の定価にして欲しいと主張し、最終的に1400円で折り合ったというのが、この本の出版にまつわる隠れたエピソードです。本屋の棚に藤原肇の本があったからと手にして、買おうと思って値段を見たら高すぎると考え、再び書棚に戻す読者をふるい落とした後に残る、本当に熱心な読者の数を知りたいという、実に軽率な試みによって迷惑を受けたのは、真野出版局長と財政的に余裕の無い若い読者でした。「日本が斬られる」はベートーベンの味わいを付け、交響曲第七番の持つ雰囲気で纏めたのですが、出版から三ヵ月後に届いた真野さんからの手紙に、やっと200部の線を突破しましたとあり、六ヶ月後に未だ400部に達していないし、わが社として始まって以来の最低記録で嫌になったという文面を読み、実に申し訳ないことをしたと後悔したものです。しかも、同時に進行中の「石油と金の魔術」がトラブルを起こし、真野さんには本当に迷惑のダブルパンチであり、本当に申し訳の無い結果になってしまいました。その結果、1981年の暮れの会議で東京新聞出版局としては、藤原肇の本を今後は企画に乗せないことが決まり、真野さんの人生にとってつらい体験になったようです。
たぶん1982年の半ば頃だったと思いますが、真野さんは定年を待たずに東京新聞社を脱藩し、麗沢大学の国際関係学部の教授に就任して、新しい人生を満喫し生き生きとしていましたが、「日本が斬られる」は出版から一年余り経っても、600部を少し上回った程度の売上でしかなく、東京新聞出版局としては最低に属す売上高として、この記録は破られることはないだろうとのことでした。それでも、私と真野さんの個人的な友情は損なわれること無く、訪日のたびに良く神保町周辺で会っていますし、若い学生達に囲まれて若返っている姿は、実に微笑ましいという印象を持ったものでした。結果として、真野さんと東京新聞社に大変な迷惑をかけてしまった、幻の本としての「石油と金の魔術」に関しては、別に新しいスレッドを開いて報告しますので、そこで改めて論じることにしたいと思います。

2 名前: 小暮綱雄 投稿日: 2003/05/22(木) 19:08
「日本が斬られる」は白地にオレンジの「斬」の文字が表紙いっぱいを埋めていて
これが結構怖い感じを出しています。今でもそうですから、書店で手にとればもっと
強烈だったでしょう。ちなみに私は古本屋経由で4冊入手所持してますが、表紙は
見るたびに怖いです。
「はじめに」に出てくる清沢洌の「暗黒日記」は私も若い頃の愛読書でした。著者
が敗戦を待たずあっけなく風の如く逝ってしまったこともあり、その悲劇性があの
怜悧辛らつな観察記録にいつまでも「詩」を与えているような気がします。

3 名前: 相良武身 投稿日: 2003/05/22(木) 22:48
相良です。この本で、印象的なのは、本屋に出てしばらくして、
消費税が導入されたことです。私は、この本は最初に買ったのを
どこかで、無くし、もう1冊買いました。その時、値段にシールが
はってあります。かって、値上げについて、同様なことを行った結果
倒産した、有名な会社があったことを思い出しながら買ったことを
思い出します。
さて、この本は、藤原さんの本のなかでは、独特の物です。
まず、テンポが速い、一言言えば、すぐ返事が返ってくる形を
とっており、本当にテープをそのまま起こしたと思われるところが
多いこと。藤原さんが漫画について(もちろん手塚治虫ですが)に
ついて、ある程度の評価をされているこ等が揚げられると思います。

この本の後書きは、いろいろと私個人も影響を与えており、名前の由来について
の記載については自分の子供の名前をつける際に大きな影響を与えて頂きました。

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