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アマゾン・レビュー
1 名前: 野田隼人 投稿日: 2004/04/14(水) 04:58
アマゾンのレビューに「FTのすすめ」として先ほど投稿しました。日経を批判していますので、アマゾンが採用するかどうかは不明です。藤原ブッククラスターの皆様に一足先に公開致します。

★★『日本経済の闇がわかる FTの読み方』(藤原直哉著 三五館)★★

「FTのすすめ」
藤原直哉氏が、FT(ファイナンシャル・タイムズ)・WSJ(ウォールストリート・ジャーナル)・日経(日本経済新聞)の三紙を比較しているのを興味深く読んだ。藤原氏は、日経新聞が日本のビジネスマンに読まれている理由として横並び主義を挙げており、「この新聞さえ読んでおけば、上司に何か質問されても答えに窮することはないし、取引先へ行けば雑談のきっかけになる。なんとなく安心だから、朝の日課として読むのである」と解説している。世界を舞台に活躍するビジネスマンにとって、日経は購読する価値が全くない新聞である上、この3月31日に漸く例の鶴田卓彦相談役を退任させることができたという低落ぶりで、旧態依然とした体質が世界中に明らかになってしまった。そうしたことから、日経が来る情報大革命の大波に翻弄され、やがては海の藻屑となることは容易に予想できよう。

WSJについて藤原氏は、「WSJは、あくまでもアメリカの国益と国民感情を重視した、アメリカのための新聞なのである。だから、この新聞ばかり読んでいる人には、ほんとうの世界情勢はわからない」と切り捨てており、小気味がいい。確かに、WSJは視野狭窄のユダヤ系アメリカ人が牛耳る新聞だから当然の話なのである。

FTについて藤原氏は、「FTも、しょせんはアングロサクソンの価値観から解き放たれることはない」としながらも、「世界でもっとも信頼できる英国の高級経済紙」であるとFTを高く評価している。藤原氏がFTを高く評価する背景については同書に譲るとして、藤原直哉氏と同姓の藤原肇というフリーランス・ジャーナリストもFTを勧めている一人であることをこの場で触れておきたい。私の場合、藤原肇氏との交流が長いことから、藤原氏にすすめられて若い頃から欧米の一流紙や雑誌を購読してきた。おかげさまで、現在ではコンサルティング業務の一環として、FTやIHT(インターナショナル・ヘラルド・トリビューン)の要約や全訳を主要官公庁に配信することも多い。ともあれ、その藤原肇氏が『夜明け前の朝日』(鹿砦社)という本を出しているが、これはジャーナリズム精神が墜落した日本のマスコミを徹底的に叩いた本なので、本書と併読されると得るものが多いと思う。

最後に、本書はFT入門書という性格も備えており、これから世界を舞台に活躍したいという、若い日本人にも読んで欲しい本であることを付言しておこう。

2 名前: 野田隼人 投稿日: 2004/05/07(金) 11:45
★★『丸山真男音楽の対話』(中野雄著 文春新書)★★

「生まれながらにして名著の地位を約束された本」
レビュアー: 野田隼人 (プロフィールを見る)   埼玉県 Japan

 『丸山真男 音楽の対話』は、下手な音楽のプロも足元に及ばぬほど音楽に造詣が深かった丸山眞男と音楽との関わりについて述べたものであり、丸山眞男の息遣いが伝わってくるような本である。特に以下の丸山の発言は強く筆者の印象に残る。

 「音楽という芸術のなかに『意志の力』を持ち込んだのはベートーヴェンです。『理想』と言ってもいい。人間全体、つまり人類の目標、理想を頭に描いて、〈響き〉=〈音響感覚〉でそれを追求し、表現する。凄まじい情熱ですね。これを『ロマンティック』と言わずして、他に何がありますか。『ロマン』は単なる情熱やセンチメンタリズムではない。人間の理想の追求が『ロマン』なのですから……。」
『丸山真男 音楽の対話』(p.75)

 「音楽のなかに『意志の力』を持ち込んだベートーヴェン」という丸山の発言を目にした読者は、今までとは違った角度からベートーヴェンを聴くようになるのではないだろうか。まさに、「人間全体、つまり人類の目標、理想」という丸山の発言にあるように、ベートーヴェンは18世紀という時代精神の申し子であり、紛う方なきフリーメーソンであった。

 なお、今までに丸山眞男の一連の著書に目を通したことのある読者は既にお気づきの通り、丸山の著書群には執拗低音(バッソ・オスティナート)という音楽用語がたびたび登場する。この執拗低音は、丸山思想を真に理解するためのキーワードとされており、執拗低音とは何かということについて教えてくれるのが本書だと思う。したがって、本書は丸山の音楽に対する熱い思い、丸山の息遣い、人となりが伝わってくる本というだけではなく、真摯に丸山眞男の思想を追求したいという人にとっては欠かせぬ本なのである。その意味で、本書は生まれながらにして名著の地位を約束されたといっても過言ではない。

3 名前: OEJR 投稿日: 2004/05/08(土) 09:31
執拗低音とは共産主義思想のことでは?

4 名前: 野田隼人 投稿日: 2004/05/09(日) 05:02
OEJRさんの質問への答えは、『丸山真男音楽の対話』並びに以下のページに有ります。『丸山真男音楽の対話』は良書の一冊であると、今でも思っていますが、是非本掲示板に読後感をお寄せ下さい。
http://www2s.biglobe.ne.jp/~MARUYAMA/book/nakano.htm

5 名前: 野田隼人 投稿日: 2004/05/09(日) 05:15
★★虚数の情緒―中学生からの全方位独学法(吉田武著 東海大学出版会)★★

きたる情報化社会の必読書 2004/05/08
レビュアー: 野田隼人 (プロフィールを見る)   埼玉県 Japan

『虚数の情緒』の副題が「中学生からの全方位独学法」となっていることから、中学生向けの数学の参考書かと勘違いされかねない本である。しかし、中身を紐解いてみると、単なる中学生・高校生向けの数学の参考書の域を遙かに超えており、これからの情報化社会を生き抜くにあたって、必要不可欠なインテリジェンスを兼ね備えた百科全書派を目ざしてもらうべく、若い人たちに一読を勧めたくなるような本であることが分かる。このあたりは、吉田氏自身が自著のはしがきで「本書は人類文化の全体的把握を目指した科目分野に拘らない"独習書"である」と述べていることからも、本書が単なる数学の参考書ではないことが明らかだ。これからの情報化社会という新時代を生き抜いていくだけの、逞しい人間に成長していって欲しいと子供に願う読者は、我が子に本書をプレゼントしては如何だろうか。

無論、本書は現役の国際ビジネスで活躍されている読者にも有益な本になると思う。また、学生時代は数学か苦手だったという読者も、数学に対する苦手意識から抜け出すのに本書は格好の書となるかもしれない。ただ、何分にも本書は千ページにもなる分厚い本であり、満員の通勤電車の中で読むには躊躇するような、広辞苑なみのサイズと重さである。仕事のない休日に、のんびりと自宅で紐解くべき類の本なのかもしれない。

6 名前: 野田隼人 投稿日: 2004/05/12(水) 14:58
★★空海の夢 (松岡正剛著 春秋社)★★

空海に迫る, 2004/05/09
レビュアー: 野田隼人 (プロフィールを見る)   埼玉県 Japan

本書の目次を読み終えると黒いページにぶつかり、以下のような白抜き文字が目に飛び込んでくる。

「生まれ生まれ生まれ生まれて生の始めに暗く、死に死に死に死んで死の終わりに冥し」

空海の『秘蔵宝鑰』の序に出てくる章句であることは言うまでもないが、空海の思想を余すことなく伝えている章句であるだけに、改めて受ける衝撃は大きい。そして、この本は単なる仏教論・空海論の範疇を遙かに超えている。人類史、生命史、地質学、分子生物学等の森羅万象を扱った本であり、百科全書派を彷彿させてくれる本である。

併せて、同じ松岡正剛氏の手による「蘇る空海」(上巻・五大に響き有り)(三密に加速する)というビデオを鑑賞することにより、空海の新しい立体像が得られると思う。

7 名前: 野田隼人 投稿日: 2004/05/13(木) 15:59
★★ビジネスで勝つ英語―こんな時は、こう切り返せ!★★(今北純一著 新潮OH!文庫)

ビジネス英会話の範疇を超えた本, 2004/05/12
レビュアー: 野田隼人 (プロフィールを見る)   埼玉県 Japan

『ビジネスで勝つ英語』は単なるビジネス英会話の範疇を越えており、現役の国際ビジネスマンにも大変参考になり得る今北さんのビジネス体験が綴られており、同時にプロフェッショナルとして世界を舞台に活躍しようとする人たちにとっては貴重な指南書になると思う。以下は、仕事の心構えに関して筆者が気に入った同著の一節である。
“I get my satisfaction from doing my work as professionally as possible. A job well done is the only reward I need.”

また、日本で言う単なる駄洒落とは異なり、欧米流のユーモアのセンスを身につけることも必要であることを教えてくれるのも本書だ。それにしても、セマンティックスを身につける上で、イギリスのブラックユーモアから学ぶべき点は多い。

(英国の)チャーチルを嫌悪していた古参女性議員が議会でチャーチルの政策を徹底的に批判し、最後にこう言い放った。
 “If you were my husband, I would put poison in your drink.”
これに対してチャーチルは平然と、こう言い返した。
 “Madame, if you were my wife, I would drink it.”

その他、本書は国際ビジネスマンには見逃せないテーマが目白押しだ。

8 名前: 相良武身 投稿日: 2004/05/13(木) 22:42
相良です。
丸山真男音楽の対話 では、明確に 自己責任についても
言及しています。
いま、自己責任と言う言葉を使いまくっている、多くの日本の
メヂア、政治家、経済人に読ませてあげたい。

きっと多くの人間が丸山真男を読んだと言うか、読んだだけでしょう。
それについても言及しています。

是非お読みください。

10 名前: 藤原肇 投稿日: 2004/05/22(土) 08:00
野田さんの#2の記事で丸山先生の音楽対話本に出てくるバッソ・オスティナートですが、その日本語訳に執拗低音とある件に関して、誰か音楽用語で正しいものを知っていたら教えてください。
どの本に書いたかは覚えていないのですが、私は学生時代にどこかで読んだ言葉として、通奏低音と言う言葉が気に入ったので使っていますが、それとこの本に使われている「執拗低音」とは別なものなのか知りたいと思います。
音楽用語に余り強くないので良く分からず、誰か正しい用語をご存知ならそれを教えて欲しいのです。

11 名前: 西條謙太郎 投稿日: 2004/05/22(土) 15:11
自宅にあった 音楽の友社刊 標準音楽辞典 およびインターネットでの
検索に拠ると以下のようです。

執拗(固執)低音=バッソ・オスティナート(伊)、グランド・ベース(英)
とは、上声の楽句は変わっていくのに、バスだけは同じ楽句に固執し、
執拗に反復し、同時に上声とバスが和声音を形成しているものを言う。
『シャコンヌ』はバッソ・オスティナートをテーマとする変奏曲。

バスが長く同度音を続けて動かず、その間、上部の和声が、バスとは
独立(非和声的)に自由に変転し展開されるものはオルガン点またはペ
ダル音とよばれ、上声とバスが和声音を形成する執拗低音とは本質的
に異なるもの。
 
通奏低音=バッソ・コンティヌオ(伊)、スルー・バス、フィギュアード
・バス(英)とは、鍵盤楽器等の奏者が、与えられた低音の上に、即興で
和音を補いながら伴奏声部を完成させる方法、およびその低音部をさす。
独奏パートが休む場合でも、楽曲を一貫して演奏されることから通奏低音
と呼ばれ、低音の上に構成される和音が、一定の約束の下に数字で指示さ
れたことから、数字付き(フィギュアード・バス)とも呼ばれる。
楽譜は低音だけが示され、低音楽器は楽譜通り演奏するが、和音楽器では
楽譜を見ながら和音を即興的に付けて演奏する。
通例、チェロ、コントラバス、ファゴットなどの低音楽器と、リュート、
チェンバロ、クラビコード、オルガンなどの和声の出せる楽器とで演奏。

12 名前: ONE-ZERO 投稿日: 2004/05/29(土) 09:50
『虚数の情緒』は文庫化を待つことにして、いまはユークリッド幾何学縮刷版を
読むことにします(イソップ童話、聖書と並んでリンカーンの愛読書だったそう
です)。

14 名前: 前田甚八 投稿日: 2004/06/01(火) 06:05

Ostinatoオスティナートとは ”執拗な、がんこな、粘り強い”などの意味を持つイタリア語ですが、西洋音楽の中の技法としては、あるひとつの旋律や音型を常に同じ声部に同じ音高でたえず繰り返す技法で、Basso Ostinatoとはそれが常に最低声部(Basso 伊: バス)において連続反復する形のことです。
これに対して、あるひとつの旋律や音型を他の声部に異なった音高で繰り返す技法はカノン(Canone伊、Kanon独、Canon仏・英)で対位法の基礎になっています。

ところでフルトヴェングラー著「音と言葉」芳賀檀訳(新潮文庫)の中に収められている
ベートーヴェンの音楽について書かれた箇所があります。その中でベートーヴェンの「楽節法」(Periodisierung (独))について書かれた部分がありますが、この「楽節法」も
丸山真男が述べている執拗低音(固執低音)Basso Ostinato に関する思想とつながるのではないかと思いました。いずれにしても非常に素晴らしい音楽評論だとおもいました。
音楽評論は楽譜の読めない人がやると軽薄なものになりがちだと常々思っているのですが
20世紀の偉大な指揮者フルトヴェングラーの音楽上の信念、さらには人間へのまなざし
などを垣間見る想いがし、かつ実際に音楽に携わった人の言葉として迫力があります。

いずれにしても音楽に関しては辞書で調べてもいまいち意味がつかめず
まず楽譜上どうなっているのかを眺める作業が必須だと思うのですが
手軽な音楽辞典の一冊として日本語では角倉一朗監修の図解音楽辞典
が白水社からでており、楽譜や図とともに解説がついているので
わかりやすいのではないかと思いました。

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