湾岸危機クロノロジー(イラク侵攻前後)

参考資料

月・日
イラク侵攻関係の国際状況とその対応
7月10(火)
[1990年]
☆ジェダで開かれた湾岸5カ国会議で、クウェートとアラブ首長国連邦(UAE)の過剰生産が議題に取り上げられ、ファハド国王がUAEのザイド大統領に電話で自粛を申し入れる。
☆アメリカ議会は兵力を10万人削減を採択。
11日(水) ☆ヒューストンで行われたサミットは経済宣言を採択して、12日間の会議を終えて閉幕。
☆李鵬首相は北京訪問中のバンダル・ビン・サルタン駐米大使と会見し、中国とサウジアラビアは外交関係樹立の交渉を開始。
12日(木) ☆チェイニー国防長官が化学兵器の生産の中止命令を行う。
13日(金) ☆米国の上院委員会は1991年会計年度において、180億ドル削減を全会一致で採択。
☆タイとパレスチナが外交関係を樹立。
14日(土) ☆第28回ソ連共産党大会は民主集中制を承認して閉会。
15日(日) ☆イラクのアジズ外相はアラブ連盟に手紙を送り、クウェートに債務の取り消しを要求。その冒頭には「すべての国のアラブ人はひとつの民族である。だから、すべてのアラブ人はアラブの富からの利益を分かちあうべきだ」と述べる。
☆モスクワの独ソ首脳会談でゴルバチョフは、統一ドイツのNATO加盟を承認。
16日(月) ☆ウクライナ共和国が主権宣言を発表。
☆パリで行われた6カ国外相会談で統一ドイツの国境問題が決着。
17日(火) ☆国営テレビでイラクのフセイン大統領が、クウェートとUAEの過剰生産を激しく非難。またイランヘの和平呼びかけに対して、イランのラフサンジャニ大統領が即座に賛意を表明。
18日(水) ☆イラクのアジス外相がアラブ連盟に宛てた手紙で、ルメイラ油田の盗掘に関してクウェートを非難。同時に、生産協定違反でアラブ諸国全体の損失は5000億ドル、イラクの損失は890億ドルと指摘。
☆クウェート議会は反発の声明を出し、サバハ外相をアラブ諸国に支援を求めるために派遣。
19日(木) ☆クウェート国境に3万人のイラク軍が結集したのに対して、米海軍が即応体制をとり、乗員の上陸許可を取り消した。
☆クウェート政府はイラク政府の非難に対して、イラクこそわが領土で石油を盗掘したと反論する。
☆べーカー国務長官はパリでソ連のシェワルナゼ外相と全談して、技術援助について協議。
☆キルギスにおけるイスラム系の反乱で、200人以上の死者が出る。
20日(金) ☆クウェート政府はイラクの要求が無法だと声明発表する。
☆中国の銭外相のサウジ訪問。
21日(土) ☆中国とサウジの国交樹立交渉が正式に進む。サウジの軍事的危機感が高まり、中国製武器に多大な関心を示す。
22日(日) ☆イラン政府はイラクの値上げ案の支持を表明。
☆米下院軍事委員長がB2ステルス爆撃機の生産中止を表明。
23日(月) ☆イラクのクウェート非難エスカレート。
24日(火) ☆ペンタゴンはペルシャ湾を警戒地域に指定して、海軍に緊急指令を行う。
☆イラク軍はクウェート国境に3万人の陸軍を結集。
☆ニューヨークの石油先物が大幅に急伸。
☆エジプトのムバラク大統領がイランを訪問。
25日(水) ☆バグダッドを訪問したエジプトのムバラク大統領に対して、フセイン大統領が武力行使しないと約束したと、クウェートに飛んでジャビル首長に伝達。
☆イラクはクウェート政府に対して、ルメイラ油田の盗掘の損害24億ドルの支払いと国境問題の話し合いを要求。
26日(木) ☆エジプトのメギド外相は、イラクとクウェートがサウジのメッカで、29、30日に直接交渉すると語る。クウェート側からはサアド首相が代表団長だが、イラク側の人事は未定。その後、イブラム革命評議会議長と決定。
27日(金) ☆ジュネーブのオペック総会は21ドル案(参考価格)を決めて閉会。生産の上限を日産2250万バレルにする合意が成立。
☆米軍は戦略空軍の空飛ぶ司令部を廃止。
☆イラクの人権問題で、米国議会はイラク通商制裁法案を採択。
28日(土) ☆クウェートのサアド首相とイラクのウダイ・フセイン革命評議会副議長の間で、盗掘と損害補償の交渉の初日がジェダで始まる。
☆アセアン拡大外相会議は、日本の軍事大国化を懸念。
29日(日) ☆南レバノンのイスラム人の抗争が本格化し、28日から29日にかけて50人近くが死亡。
☆イラク軍が国境地帯に再結集。
☆中国に珍宝島を移管して、中ソの関係が正常化に移行。
30日(月) ☆ソ連とアルバニア29年ぶりに復交。
☆シンガポールで開催されていた、第2回アジア大平洋経済協力閣僚会議が閉幕。
31日(火) ☆本格的な交渉がクウェートとイラクの間で行われる。
☆米政府はUAEと海空軍の合同演習を行うと発表。
☆北海ブレント石油は湾岸緊張で20セント上り、20ドル5セントになる。
8月1日(水) ☆ジェダでのイラクとクウェートの会談が決裂。
☆クウェート国境附近にイラク軍が過去最大の10万人を結集して、軍事衝突の危険性が高まる。イラクとクウェート両国は国境を閉鎖する。
2日(木) ☆午前2時にイラク軍が国境を突破。
☆2時35分にヘリコプターで脱出直前のジャビル首長は、ファハド国王に電話で侵略を報告。
☆国連は緊急安保理事会を招集して、イラク軍の即時無条件撤退を要求する共同決議案を全会一致で採択。
☆米国をはじめ各国はイラクとの貿易停止とクウェート資産を凍結。
☆ソ連はイラクヘの武器供与を停止。
☆ソ連外務省はイラク軍の即時無条件撤退の声明を発表。
3日(金) ☆米ソ両国はイラクヘの武器禁輸と、イラク軍のクウェートからの即時撤退を要求する共同声明を発表。
☆ブッシュは、米国にとってサウジの安全は重要な課題だと表明。
☆アメリカ政府は国連の緊急安保理の開催を要求した。
☆ミッテラン大統領は湾岸危機について、ゴルバチョフ大統領と電話会談を行う。
☆東証の株価3万円を割る。
☆損保会社はペルシャ湾向けの保険料を2倍にした。ロイズはイラク向けを20 倍、クウェート向けは80倍と発表した。
☆亡命クウェート政府がサウジのタイフ市のシェラトン・ホテル内に設置される。
☆トルコ議会はイラクのパイプライン閉鎖について協議。
4日(土) ☆ECは対イラク制裁措置を決定。
☆PLOのアラファト議長はイラクを訪問して、アジズ外相と会談する。
☆北イエメンのサレハ大統領はイラクを訪問して、フセイン大統領と会談する。
5日(日) ☆チェイニー国防長官がサウジに出発。
☆フセイン大統領特使のズバイディ運輸相がリビアを訪問して、カダフィ議長と会談。
☆フセイン大統領特使のラマダン副首相が、フセイン親書をトルコのオザル大統領に渡す。
☆イラクの経済制裁に日本も参加。輸出入の全面禁止。
6日(月) ☆チェイニー国防長官がファハド国王と会談。
☆イラクはトルコ経由の2本のパイプラインのうちの1本を閉鎖する。
☆PLOのアラファト議長はバグダッドからカイロを訪問。
☆国連安保理は経済制裁に関しての661条の裁決を行う。
7日(火) ☆米軍にサウジ派遣の特別命令が出る。
☆フセイン大統領はクウェート撤退への圧力を拒絶すると、ラジオで声明する。
☆チェイニー国防長官がサウジのスルタン国防相と会談。
☆GCC(湾岸協力会議)がジェダで開催され、クウェート侵攻で発生した事態を認めないと発表。
☆スイス政府もイラク制裁に参加する。
☆サウジ経由のイラク石油のパイプラインが閉鎖される。
☆トルコ政府も残っていたイラクのパイプラインを完全に閉鎖。
8日(水) ☆ブッシュはホワイトハウスの執務室からのテレビ演説で、サウジ防衛のために、空挺部隊と航空兵力を中心にした米軍を派遣した、と公式発表する。
☆イラクの革命評議会は米軍のサウジ派兵に遺憾の声明を発表し、イラク軍はサウジを攻撃する意図のないことを表明。またイラクとクウェートの完全統合案を全員一致で承認。
☆英国防省はサウジヘの派兵を発表。
☆スペイン政府もイラク制裁に参加。
9日(木) ☆国連の安保理は、イラクによるクウェート併合を無効とする決議を全会一致で採択。
☆ファハド国王はテレビで米軍のサウジ駐留について発表。
☆ベイカー国務長官がトルコを訪れて、オザル大統領と会談。
☆ソ連はイラクのクウェート侵略と併合を非難。
☆特別閣議でフランスもペルシャ湾に派兵すると決定。
☆PLOのアラファト議長は再度イラクを訪問し、フセイン大統領と会見。
10日(金) ☆ブッシュは海上封鎖を表明。アメリカ軍は作戦を「砂漠の盾」と命名。
☆アラブ連盟緊急首脳会談のオープニングにムバラク大統領が演説して、紛争をアラブ自身の手で解決するか、それとも外国勢力の介入を許すかの2つに1つの選択だと発言する。この会議には21カ国のうち15カ国の元首が参加した。
☆フセイン大統領はアラブ連盟緊急首脳会談に対抗して、サウド王家打倒を強調した。
11日(土) ☆ソ連とフランスは米国の海上封鎖を批判する。
☆アレクサンドリアでアサド大統領、ムバラク大統領、カダフィ議長、シャドリ大統領(アルジェリア)の緊急4首脳会談が行われる。
12日(日) ☆フセイン大統領の提案として、イスラエルの西岸とガザ地区からのイスラエル軍の撤退と、レバノンからのシリア軍の撤退が、クウェート問題の解決になると提案。
☆米、フセイン提案を断乎拒否。
☆英国もフセイン提案を拒否。
☆フランスのデュマ外相は米国の政策と一線を画すと表明。
☆サウジ派兵のモロッコ軍とエジプト軍の第一陣が到着。
13日(月) ☆英国も米国に従って海上封鎖参加を決定。
☆ヨルダンのフセイン国王はイラクを訪れ、フセイン大統領と会談する。
☆イエメン政府はイラクヘの食糧支援を行うと表明する。
☆オーストリア政府も国連の制裁を実施すると発表。
☆日本政府は15日からの海部首相の中東歴訪の延期を発表。代理として中山外相を派遣。
14日(火) ☆ヨルダンのフセイン国王が訪米に出発する直前に、ミドハッド・イラク特使がヨルダンを訪問して国王と会談する。
☆ブラジル政府はイラクヘの食糧と医薬品の輸出を再開すると発表する。
☆シリアを訪問中のケリー米国務次官補はアサド大統領と会談。
15日(水) ☆イラクのフセイン大統領はイランに包括和平を提案して、イラン領からイラク軍の全面撤退を確約。
☆ヨルダンのフセイン国王が米国を訪問して、スコウクロフト補佐官と会談。
☆「ルモンド」紙が、フランス政府は禁輸措置と経済封鎖の概念は別であると報道する。
16日(木) ☆アメリカはペルシャ湾における海上封鎖を実施。
☆ブッシュ大統領とヨルダンのフセイン国王が、ケネンクポートで会談。
☆シリアのハッダーム副大統領とシャラ外相がイランを訪問して、ラフサンジャニ大統領と会談し、イラクのクウェート無条件撤退で合意した。
17日(金) ☆イラク軍のイラン占領地域からの撤退開始。フセイン大統領は、聖戦を全アラブに呼びかける。
☆米海軍の臨検開始でペルシャ湾緊迫。
☆日本政府内部で掃海艇派遣案が急浮上。
18日(土) ☆国連安保理事会はイラクに外国人の即時出国を要求。
☆米国は日本に要員派遣を打診。
☆中山外相はサウジのファハド国王とサウド外相と会談。
19日(日) ☆ブッシュ大統領が夏休み先から2度目のワシントン帰着をして、国家安全保障会議のスタッフと協議。
☆フセイン大統領は国営通信を通じて、ペルシャ湾地域から米軍が撤退して海上封鎖が解除されノラクを攻撃しないと保証されるなら、人質は解放すると声明。
☆イラク革命評議会は、ジャビル首長の財産没収を決定する。
☆ファハド国王はPLOに激怒して、年間1500万ドルの援助を停止。
20日(月) ☆オペックは増産を発表。
☆トルコのオザル大統領はクウェートの大使館閉鎖に関して、西側と行動を共にすることを決定してブッシュに報告。
☆ブッシュは人質の即時解放を要求する。この時、米政府は初めて人質という言葉を使用。
☆イラク政府は在クウェート大使館に閉鎖命令を出す。
☆オザル・トルコ大統領がイラク制裁に伴う損失の補償を求める。
☆ハマディ・イラク副首相は訪ソして、シェワルナゼ外相と会談。
☆西独はペルシャ湾派兵は憲法上不可能という結論を確認する。掃海艇のペルシャ湾派遣も憲法上断念。
21日(火) ☆アジス・イラク外相は、イラクがアメリカと交渉する用意があると発表。
☆フセイン大統領はブッシュ大統領宛の声明で、イラクの人質は第2次大戦中の米国における、日系人の強性収容所よりも人道的であると強調。
☆イラクのハマディ副首相はシェワルナゼ外相と、ペルシャ湾問題についてモスクワ会談。
☆西欧諸国はペルシャ湾での協調行動を発表。
☆中山外相はヨルダン国王と会談する。ヨルダン国王は、アラブ間の平和解決を協調。
☆ブッシュ大統領は国民に省エネを呼びかける。
22日(水) ☆ブッシュ大統領は予備役招集を命令。
☆エシプトの新聞報道によると、米国はイラク内のクルド勢力と、頻繁に接触しているとのこと。
☆日本政府は3段階で和平要員の中東派遣を決定。そのために臨時国会を召集する方針を決める。
☆サウジは兵員募集センターを開設。
☆サウジのバンダル・ビン・スルタン駐米大使は、ペルシャ情勢の討議のためにモスクワを訪問して、シェワルナゼ外相と会談。
23日(木) ☆フセイン大統領の人質との会見をテレビで放映。
☆サバハ・クウェート外相がイランを訪問して、ラフサンジャニ大統領と会見し、イラン・イラク戦争中にイラクを支援したことを謝罪する。
☆アルメニア共和国が主権宣言を行う。
24日(金) ☆マレーシアはサウジが危機の場合は、派兵の用意があるという首相発言を発表。これに対して、2000人の市民が「イスラム世界への裏切り」と抗議して反米デモを行い、アメリカとイスラエルの国旗を焼く。
☆ゴルバチョフはイラクのフセイン大統領に、安保理事会の決議の履行を求める。
☆タジク共和国も主権宣言を行う。
25日(土) ☆フセイン大統領は外国人の一部が戦略拠点に移送されたと語る。
☆カダフィ議長はデクエヤル国連事務総長宛の手紙で、米国の行動を非難する。
☆イラクはフランスのミッテラン大統領の4段階平和構想を評価。
☆国連安保理は武力行使容認決議案を採択する。それに対して、イラクは国連がアメリカの手先になったと非難する。
☆オーストリアのワルトハイム大統領がイラクを訪問して、フセイン大統領と会談。
26日(日) ☆べーカー国務長官とシェワルナゼ外相はイラク封じこめを一段と強化すること を合意する。
☆シリアとエジプトの間の接触が増え、近くアサド首相がカイロ訪問と発表。
27日(月) ☆米国はサウジにM-1戦車など67億ドル分の武器を売却。
☆PLOのアラファト議長がイラク撤退の調停案を提示。
☆ジャビル・クウェート首長が国連で支援を訴える。
28日(火) ☆イラクはクウェートを19番目の州にすることを正式に決定。
☆ソ連とバーレンの国交が樹立する。
☆韓国の李外務次官補が軍の派遣は考えていないと表明。
29日(水) ☆イランのアガザデ石油相はオペックの増産を非難。
☆日本政府は閣議で多国籍軍への資金協力や貢献策について決定。カネとモノからヒトの段階へとエスカレート。
30日(木) ☆イラクのフセイン大統領は、湾岸和平を話し合いで行うようにと、ラジオで強調する。
☆ソ連とイスラエルの間の正式領事関係の樹立。
☆ブッシュ大統領の日本への戦費負担要請に対し、日本政府は今年度予算から多国籍軍に10億ドル出すと決定。
31日(金) ☆ゴルバチョフ大統領は米国のサウジ派兵を容認する立場を発表。
9月1日(土) ☆イラクは1日から基礎食料品の配給制を実施。
☆海部首相がエジプト大統領と会談する。
2日(日) ☆サウジは200万バーレルの増産。
☆ハリファ・クウェート蔵相来日。
3日(月) ☆フセイン大統領は侵攻後初めてクウェートを視察して、軍司令官と会見。
☆ミッテラン大統領は湾岸諸国を訪問して、サウジのファハド国王と会談する。


湾岸危機 世界はどう動くか inserted by FC2 system