〈付〉国会で追及されたドームゲート事件
──行政改革に関する特別委員会議録(第九号より技粋)

(一九八三=昭和五八=年一〇月六日)




金丸信委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。
 各案審査のため、本日、参考人として石油公団理事勝谷保君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、ご異議ありませんか。
 [「異議なし」と呼ぶ者あり]

金丸委員長 ご異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。

金九委員長 井上一成君。

井上一成委員(社会党) むだのない行政、国民のための効果ある行政を推し進めていく、これはまさに行政改革の中心的課題であるわけであります。経済不況の長引くなかで国家財政が逼迫する。そういうなかで、歳入欠陥さらには歳入捻出の一つの議論として、石油税の引き上げ問題がいま持ち上がっているわけであります。
 私は、まず石油税引き上げにかかわる政府の見解を最初に聞かしていただきたい。国家財政を確保するという観点からのご見解を、まず聞いておきたいと思います。

宇野宗佑国務(通産)大臣 原油価格の引き下げということは、当然それに課税される税収の減ということでございまして、石油特別会計におきましては歳入の減もきたすであろう、こういうふうになっております。だから、歳入減をきたすからすぐにその補填で増税だ、そういうふうに短絡的に私は考えたくない。このことは先般のいろいろな委員会におきましても申し上げてまいったわけでございます。
 そこに歳出があるからすぐに歳入をそれだけ埋めようというのじゃなくして、まず歳出の面におきましても、やはり、歳出そのものが時代に合っているものであるかどうか、今後の見通しを満たすものであるかどうか、そうした点におきまして十二分に検討して合理化、効率化を図っていきたい、そしてそのバランスの上に立って最終的な判断を下したい、私はこう思っておりますが、まだ先生がおっしゃるように、すぐに増税というふうな考えは持っておりません。

井上(一)委員 わが国のエネルギー資源の長期安定供給を確保していくということは、まさにいま大きな課題であります。そういう意味で、石油探鉱開発なども含めて、いまいろいろなプロジェクトが各地に繰り広げられているわけでありますけれども、ここで基本的な問題として、石油特別会計はどういうふうに使われているのか、この点についても最初に聞いておきたいと思います。

松尾(邦)政府委員 ただいまの石油特別会計でございますが、五八年度で申しますと、石油税の収入を主たる財源といたしまして、それを一般会計から繰り入れて歳入にあてておるほか、原重油関税を同じく特別会計に繰り入れる歳入構造のもとに、石油対策といたしまして石油の開発、備蓄、技術開発などの石油対策部分、それから代替エネルギー対策部分、大きく分けて以上の二口から成り立っております。

井上(一)委員 冒頭に申し上げたように、むだのない行政、国民に効率ある行政、これは行政改革の本質であります。私は、石油特別会計の歳出構造に大きなからくりがあるのではないか、そういうことを踏まえて、非常に理解に苦しむ面がたくさんありますので、ひとつ具体的な事例としてお聞きをいたしてまいります。
 カナダの北極圏、ボーフォート海域の鉱区を所有するドーム社、これはカルガリーに本社をおくわけでありますけれども、当初このドーム・ペトロリアム社からわが国に対する鉱区援助のアプローチはどのような形で、どんな話で持ち込まれたのか、まずそれから聞きましょう。

勝谷保参考人 ドーム北極海プロジェクトに参加した経緯についてご報告申し上げます。
 五三年の三月ごろでございますが、先生ご指摘のドーム・ペトロリアム社から経団連に対しまして、北極海における同社が保有しております鉱区での探鉱開発に対しまして、日本側で参加したらどうかというプロポーザルが出されました。その後、経団連からのお話もございまして、私ども公団も参画いたしまして、二年間にわたる交渉を経たわけでございます。
 五五年八月に石油公団とドーム・ペトロリアム、さらに参画いたしますドーム・カナダ等々を含めまして、資金供与方式によりますこの北極、ボーフォート海域での参加につきまして基本的な合意に達しました。五六年の二月に石油公団と民間の四四社の出資によります北極石油というものを設立をいたしました。
 この民間四四社は石油開発会社、精製会社、さらには船会社、さらには商社、この四四社が入りまして北極石油というものをつくりました。二月一六日にこの北極石油とドーム・ペトロリアム社、さらにその子会社でございますドーム・カナダ社、三社の間で正式な契約調印がなされたわけでございます。


なぜ資金供与方式にしたのか

井上(一)委員 いまお答えがあったように、五三年の三月に経団連を通しての協力要請があったわけです。最初は、ファームアウト方式での経済協力だったのです。ところが、二年後の五五年三月資金供与方式にこれは変わったわけです。その理由は何なのか。そして資金供与方式とファームアウトのデメリット、どちらにどのようなデメリットがあるのか。

勝谷参考人 先生ご指摘のとおり、この北極石油とドーム社との契約は資金供与方式でございます。
 この中身は、北極石油が探鉱に必要な資金を貸し付ける、そしてその結果出てきます油についての権利を得るわけでございますが、先生ご指摘のように、実は最初はファームインという形、従来の探鉱会社が通常やっております鉱区の一部を権益としてとるという方法でアプローチがあったようでございますが、当時、ちょうど五五、六年ごろでございますので、カナダにおいてエネルギー開発に対する国として相当強力な政策が推進されておりますし、当時のそのチャンピオンでありますドームは、その鉱区のなかで油が当たるというような事実などもございましたものですから、非常に強気の態度に出てまいりました。
 一方日本側は、当時としては、ぜひ近き将来、有望な鉱区でございます北極圏での油を当てる、そしてその油を日本に持ってくるということに非常な希望を持っておりましたので、当時としましては、必ず油はなくなる、そして油は当たるという前提であったものでございますから、油が当たるのならばカナダ側が強く要請しております資金供与方式であったらどうであろうかということでこの方式を採用いたしました。ファームインをいたしましても、もし油が当たって予定どおりどんどん油価が上がるという状態でありますれば同じことになったわけでございましたので、当時、この四四社初め、役所のご指導もいただいた上で、この方法を決定したということでございます。

井上(一)委員 私は日の丸原油をどうしても長期安定確保したいという、わが国の焦りあるいは強烈なカナダ側の売り込みというのでしょうか、アプローチ、そのことはそれなりに理解をするわけですけれども、なぜ資金供与方式にしたのか。十分な担保がそこに確保されていたのかどうか、そういうことにも大きな疑問を持たざるをえないわけであります。
 それから、二月一六日ですか。その要請にこたえるために北極石油を石油公団が中心となって民間企業も含めて設立をして、資金手当をしていくわけです。このときにドーム・ペトロリアムとドーム・カナダとに正式に契約をされたのかどうか、あるいは資金総額はいったいいくら供与されて、いつ支払われたのか、この点も聞いておきたいと思います。

勝谷参考人 まず契約でございますが、先ほど申し上げました、つくりました北極石油とドーム・ペトロリアム社、そしてその子会社でございますドーム・カナダ、この三社の間の三社契約が契約方式でございます。
 (井上(一)委員、「二月一六日ですか」と呼ぶ)。
 締結日は五六年二月一六日で、発効日が五六年三月三日ということになっております。そして、金額は四億カナダ・ドルでございます。

井上(一)委員 さっきドーム・ペトロリアムはカナダで一番優秀な大きな石油会社だというお答えがあったように思うのです。一九七九年資金援助の話し合いがあったとき、そのカナダにおける石油開発会社の一日当りの生産高、いわゆる産油量の一番大きな規模の会社であったのかどうか、あるいはドーム・ペトロリアム社はどれくらいの位置に、いまお答えがあったように優秀な位置づけにあったのかどうか、その点について重ねて聞いておきましょう。

松尾(邦)政府委員 ドーム・ペトロリアムの数字、手元にございますのは八〇年度の数字でございますけれども、石油、それから天然ガスなどございまして、原油換算いたしますと、生産量では第七位でございますけれども、確認埋蔵量では第三位、鉱区保有面積では第一位ということでございました。

井上(一)委員 私の調べでは、七九年話し合いがあった当時、第一九位、決して大きい企業だとは位置づけられないわけです。そのような順位の、いわばどちらかといえば低いランクの企業なんです。そこに援助協力の話し合いが成立した。
 それじゃ、ドーム・カナダ社はいつ設立をされたのでしょうか。


契約時にドーム・カナダは未設立

勝谷参考人 ドーム・カナダ社の概要を申し上げます。
 一九五八年にアルバータ州の会社法に基づきまして、ラルタ・ペトロリアムとして設立をされました。その後は、同アルバータ州で小規模な石油ガス事業を運営していた会社のよしでございますが、一九七九年に至りまして、ドーム・ペトロリアムの子会社でございますプロポ・ガス社が一〇〇%出しまして、このラルタ・ペトロリアムを子会社にいたしました。ドーム・ペトロリアム社の孫会社でございます。
 さらに、これが一九八〇年の一二月に至りまして、ドーム・カナダ社に社名を変更いたしております。そして、翌年の一九八一年の三月にドーム・カナダ社は株主公募によりまして、先ほどのプロボ・ガス社から離れまして、ドーム・ペトロリアムが四八%を所有、そして残りの五二%を一般の株主が持つという形に変わっております。

井上(一)委員 ドーム・カナダ社はいま言う一九五八年のラルタの系列というのか、そういう会社を──冬眠会社であったのかどうか、そこも私は指摘をしたいのですよ。その会社がどういう流れのなかで生まれてきたか、私が調べた範囲というよりも、むしろ一九八一年のアメリカのSECを通したドーム・ペトロリアムの年次報告のなかには、一九八一年の三月にドーム・カナダ社を設立したということが書かれているわけなんです。
 そして、この年、八一年は、ドーム石油にとっても非常に活気のある一年であった。さらには、その系列会社のなかでドーム・カナダは、カナダ資本の企業を対象とする国家エネルギー計画が始まったのに対応して、カナダ政府が民族資本、カナダのエネルギー資源確保のための一つの方針、方策として高率の補助をやっていこうというなかで、その対応を受けてこのドーム・カナダは設立された企業だ。
 いわば、私から指摘をしたいのは、わが国が二月一六日、ドーム石油とドーム・カナダと三社契約をしたと言うけれども、そのときはまだドーム・カナダは実質的に設立はされておらず、何らかの形での、いろいろな会社を経由した流れのなかで存在をしていたかもしれない。
 しかし、ドーム・カナダとしては三月である。それが、実質的に効力の発効が三月三日だといまお答えがあった。契約は二月一六日。いわば存在をしない会社あるいはドーム・ペトロリアム社とかかわりのない会社との関係で、三社契約が結ばれている。そういうことを私はこの資料で知ることができるわけです。
 これはアメリカがちゃんと年次報告として出された原文でありますが、これが間違いなのか、あるいは政府、石油公団に正しい、納得のいける資料があるならぜひご提示をいただきたい、こう思います。

勝谷参考人 先生のご指摘のような事実は時系列的には存在すると思いますが、ちょっとご説明をさせていただきたいと思いますのは、実は、このカナダ・ペトロリアムが持っております北極海の鉱区、さらにはカナダ・ペトロリアムが持っております全カナダの鉱区、これについて実際の穴を掘って探鉱活動をするオペレーティングカンパニーとしてこのドーム・カナダを設立したわけでございまして、ドーム・カナダは従来の仕事を全部やめまして探鉱に専念をするということでございます。
 さらに、当時カナダ連邦の国家エネルギー計画がございまして、先生ご存じと思いますが、これでは一九九〇年までに石油の自給を一〇〇%まで達成いたしまして、その際カナダ資本で五〇%を占めるという政策を遂行中でございました。そして、このために適格な要件を備えます会社に対しましては、最高八○%までの政策補助をするという政策を推進中でございます。したがいまして、その政策との対応のためにも、このドーム・カナダをつくりまして、そこでやるということは既定の方針でございました。
 そして、実はドーム・ペトロリアムが持っております鉱区とさらにドーム・カナダが持っております鉱区がそれぞれございまして。その鉱区が錯綜して北極のボーフォート海に存在したわけでございます。
 したがいまして、私どもはこの二社の関係を考えまして、北極海の契約は三社契約にするのが最もいいのではないかという感じを感じ取りまして、そういう契約を進めたという事実がございますことをご報告申し上げます。

井上(一)委員 私は三社契約の是非を問題にしているのではない。三社契約をした時点とドーム・カナダが設立をされた時点。いまおっしゃるように、これにも、一九八一年三月に設立をされた、このドーム社はボーフォート海の鉱区で探鉱業務を引き受けてやる企業である、ドーム石油は三年間の協定をドーム・カナダと結んで一定の利益を得る権利をお互いに供与していく、こういうことをちゃんと書かれているのです。
 あなた方はこういうことがきっちりと説明できるのかどうか、できないわけでしょう。二月に契約して、三月にこれは設立されている。だから効力は三月にといういまのお答えが出てきたのではないだろうか。これに対してあなた方の方から、石油公団から、これをお持ちでしょう、私の指摘をしていることにどう弁解をなさるのですか。

勝谷参考人 先生のご指摘はまさにそのとおりでございます。私ども、それを否定もいたしておりません。ただ、先ほどからるる申し上げますように、この前身である会社がございまして、この会社を子会社にして、名前を変えて、そして将来はこれに全面的に探鉱さすことになっておるので、三社の協定を結ばせていただいたということでございます。

井上(一)委員 それでは、現在のドーム・カナダ社の経営状況はどうなんでしょうか。

勝谷参考人 実は、わが方と契約を結びましてからしばらく後でございますけれども、このドーム・カナダがカナダの非常に大きな石油会社の購入に踏み切りました。これは当時、油価が上がるであろうという前提、さらにカナダ化政策はどんどん進むであろうという前提のもとに、借金政策でその会社を吸収いたしたわけでございます。
 ところが、その後の油価の情勢、需給関係はご承知のとおりでございまして、この思惑がみごとに外れたわけでございます。その結果、大変な借金を背負うということになってまいりました。
 そこで、このドーム社の救済策ということをカナダ連邦政府とカナダの四大銀行が進めているわけでございます。この中身は、それぞれカナダの連邦政府とカナダの四大銀行が五億カナダドルを出してドーム社の転換社債を買うとか、四つばかりの大綱がございます。この大綱の推進を目下図っているところでございますが、なかなかその話がつかないということで、その話をつけるのが次つぎに延びていって、いまのところ来年の一月まで延びているというのが実情でございます。
 一方でそういう状況がございますので、決していい状況ではございませんが、一九八二年が最悪の年で、五千五百万カナダ・ドルの赤字を計上いたしました。一九八三年になりましては、微々たるものではございますが、まあまあ黒字ということで推移をしているのが実情でございますが、背景には先ほど申しましたような大変な借金があるということで、楽観が許されない会社の実情でございます。

井上(一)委員 いまお答えがあったように、この経営状況はまさに赤字経営で、自転車操業という言葉がありますが、支払いを延期し延期し、まさにこの会社は破産寸前の状況である。
 カナダ政府としてもつぶすにつぶせないから、何とかこれはどこかへ、カナダ石油にでも吸収合併でもして、何とかかっこうをつけていきたいというような思惑もあるのではないだろうか。一応、全般、ドーム・カナダの資金供与をした経緯と現在のドーム・カナダの実情を私は大まかに確認をしたわけです。


七七〇億円の資金使途
 じゃ、いったい、四億カナダ・ドル、わが国の七七〇億円ですよ。この投資は生かされたのかどうか。 人事院勧告凍結八百億。あなた方政府は、この金をちゅうちょして、今日まで頑として拒否しつづけているわけです。片側で、頼りない会社に七七〇億の金をつぎ込んだわけです。効果ある投資なのか資金援助なのか、財政再建、行政改革、まさにこの点が私は問題だと思う。
 どうなんですか。この七七〇億円の効果、このことについて、私はそれぞれの見解を聞いておきます。

勝谷参考人 先ほどご説明申し上げましたが、私どもの四億カナダ・ドルは探鉱資金でございますが、この四億カナダ・ドルを含めまして、カナダサイドでは一〇億ドルの探鉱投資を進めております。
 その結果、現在まで、一九八三年九月末でございますが、一八構造、油がありそうな構造一八構造のなかに三〇の試掘を行ないました。そして、目的深度まで、これは夏しか掘れない条件のところでございますが、目的深度まで完掘をいたして、テストを終了したものが一六坑でございます。そのうち、一三坑につきましては五油田、一油田はガスと油でございますが、二つはガス田でございます。これを八構造掘りまして、当たっております。しかしながら、三坑道については、掘削の結果、油兆、ガス兆がなく、廃坑にされております。
 いま、一九八四年以降に持ち込んで作業を中断中のものが六坑ございます。さらには、掘削に障害がございまして目的深度まで行かないというものが八坑あります。ここらを見ますと、従来の探鉱活動で行なわれる程度のところは大体やったという感じがいたすわけでございます。先生ご存じと思いますが、残されておりますこの地球上の膨大な地域としては。この北極が残されております。
 油価が上がったときのことでございますが、将来油価が上がって需給がタイトになりましたときは、この北極の油田というのはわれわれの将来における重要な油田でございます。技術の開発を待ちまして進めなくてはいかぬ分野ではございますけれども、その意味で、着々と言ったらあれでございますが、まあそれなりの探鉱活動を進めているということは申せるのではないかと思っております。

井上(一)委員 七七〇億円のこの資金はどのような分野で何に使われていったのか、石油公団としてご承知だと思うのです。たとえば何キロのパイプラインをプッシュしたとか、いわゆる探鉱の必要な経費として七七〇億円の資金使途。

勝谷参考人 先ほども触れさせていただきましたけれども、カナダサイドの金と一緒にしまして、先ほど申しました北極海、ボーフォートの試掘探鉱に使わせていただいております。
 この金の使い方につきましては、実は毎年二回の委員会がございまして、さらにその下にサブコミッティーがございまして、それぞれのところでこういう坑道にこういうふうな掘り方をする、これに金をいくら使うという提案がございまして、それをいちいちチェックの上、実は進めているということでございます。

井上(一)委員 探鉱試掘の資金に使うというのは、四億ドルは当然そのために供与したのですからね。そのなかでどういうところに七七〇億円が消化されていったのか。具体的な資金使途の明細を、私はお聞きしているのです。

勝谷参考人 繰り返して恐縮でございますが、先ほど申しましたように、ドームの鉱区、北極海のボーフォート海でございますが、その鉱区に対して、一八構造に対しまして三〇の試掘をいたしました。その金に対して一部をその四億ドルで充当したということでございます。
 くどいようでございますが、先ほどの委員会といたしまして、さらに私どもとしては、こういう重要な金でございますので、ちゃんとした公認会計士といいますか、そういうもののチェックを経たサーティフィケーションをつけて本件を認めるという形を実はとったわけでございます。


甘かった技術・経済評価

井上(一)委員 もちろん公認会計士が法的に必要であって会社の貸借対照表というものはつくられていくわけなんですね。やはり、資金を供与したわが国が具体的な資金使途について承知をしているのか承知をしていないのか、承知をしているとすればここで報告をいただきたい。
 一八ヵ所に試掘をした、ほとんどがだめであった。では、個々の試掘をした具体例に対して、ここは何億、ここは何億と言えるのですか。あなた方はそこまでの十分な配慮というか注意というか、そこまでのきっちりとした確認はしてないのじゃないですか。この金は貸しっ放し、行きっ放しだと。

金丸委員長 もう少しきちんとした返事をしてください。

勝谷参考人 いま先生のおっしゃいましたように、この北極海、ボーフォート海の探鉱に使ったことはそのとおりであるとおっしゃっていただきましたが、まさにそのとおりに使ったわけでございまして、それでは、現地のカナダサイドが支出をして、この金はここというような細部のところまで逐一全部おまえたちは把握しているかということになりますと、これは、先ほども申しました年二回の委員会とさらにはサブコミッティーでそれぞれのこれをアグリゲートした一つの資料が出るわけでございます。
 これがわが方としてはオーソライズしているということでございますので、先生がおっしゃるような逐一全部やっているかということになれば、これはおっしゃるとおりでございまして、残念ながらそこまでやるほどの体制をとっておりません。

井上(一)委員 それでは、石油公団は、主体的に取り組んでいる北極石油ですね、現状において北極石油のこのプロジェクトに対する対応はどう考えているのか。どのように対応していこうとしているのか。

勝谷参考人 先ほど来申し上げておりますが、私どもとしては出発の時点で関係者と十分相談をいたしまして、技術評価、経済評価をいたして進めたわけでございます。
 当時は最善の努力をいたしましたけれども、その後、先ほど申しましたハドソンベイ・オイル・アンド・ガス会社という巨大なガス会社の買収のために超積極的な経営路線を遂行いたしましたので、それが時勢に対応できませんでした。その結果、現在の時点でこれを見ます限りは、必ずしも満足すべき状況ではないという残念な状況でございます。
 私どもとしては、これらの実態によく対応するために、会社も当時はどんどん試掘を進め、油田の開発を進めて、少々高い油でも売れるという前提でございましたが、そういうことがとれませんので、しばらくの間は会社をスリムな体制にいたしまして、少数精鋭で天下の大勢が好転する時期を待つという状態をとるべきではないかという考えを持っております。その体制をどうするかということは目下検討中でございます。

井上(一)委員 技術評価の見通しの甘さ、そういうことも含めて体制をスリムにしたい、これは当然だと思うのです。行革のなかでこれこそまさにスリムにし、全部まる裸にすべきじゃないか。さらにはこのことについての責任問題も私は生まれてこようかと思うのです。
 八七年には原油が手当てできるという契約でしょう。時期を待ちたいなんて言って、ここ三年や五年でそんな見通しをいまあなた持てるのですか。これはきょう一日の議論じゃありませんよ。国家財政を再建していかなければいけない。行政改革をやらなければいけないという、これは中曽根さんの一つの大きな政治公約ですよ。
 国民に小さなことを押しつけてむちゃくちゃなことをやっている反面、こんなところで七七〇億の金が死んでいるのです。僕はここを反省をしてもらいたい。こういうことがいまの石油特別会計、大蔵大臣もいらっしゃるけれども、私は歳出構造の理解に苦しむ不可解な一つの象徴的な具体例として、持ち上げたわけです。


プロジェクトに問題があった

 率直に言ってこれは失敗だ、このプロジェクトは失敗でありました、そういうことをここできっちりと公団は国民にわびる気持ちでお答えをいただく、そのことがあしたからの前進というか取り組みにつながると私は思うのです。私はその点をここできっちりと聞いておきたい。
 きょう一日限られた時間で議論するわけですが、この問題こそ行政改革のなかで何としても改めてもらいたいという私の気持ち、熱意がこの質問になったわけです。どうぞ素直な見解を重ねて聞かせていただきたい、こう私は思います。

勝谷参考人 ただいま先生ご指摘の点を肝に銘じまして、スリムな体制をとるべく行政官庁のご指導もいただきながら、相手はまた株式会社でございますので、それに対する的確な対応をとらせていただきたいと思っております。

井上(一)委員 まあ勝谷理事も立場があって非常に答弁が苦しいだろうと思います。しかし、少なくとも失敗でしたよという私のこの指摘、そのとおりにまじめに受けとめますか。もう一度重ねて、大変失敬だけども、失敗でしたと……。

勝谷参考人 現時点に立ちます限り、残念ではございますけれども、非常に問題のある対応をしたということは言えるのではないかと思っております。

井上(一)委員 勝谷理事は、公団として答弁のできる限界ぎりぎりいっぱいでいま答えられたわけです。私はまさにこのことがむだ遣いの親方日の丸の最大公約数だ、こう思っているわけです。地方自治体の問題などもいろいろなことが指摘されますよ。
 今度は国家財政のふところを預かる大蔵大臣、こんな事実、こんなことはやはり改めなければいけないし、再点検をしていかなければいけないし、こんなことがまさに行政改革の中心におかれなければいけないと思うのですよ。いかがですか。大蔵大臣のいまのプロジェクトに対する私の質疑を通してお感じになったこと、さらにこれからどう取り組んでいくかという決意も含めて聞いておきたいと思います。

竹下登国務(大蔵)大臣 私もいまの問答を聞きながら、探鉱事業というものは大変にむずかしいものだということは素人ながらわからないものでもございません。しかしながら、財政改革の進め方の基本として、特別会計などというものは歴史的経過、そのときの必要性に応じてできたものであると思っております。
 しかし、そういうものもその制度、施策の根源にさかのぼって洗い直せというのが、今日の財政改革に当たっての基本方針でございますので、この個別問題に対する見解は別といたしまして、そのような姿勢で対応していかなければならない私の立場であると深く認識をいたしております。


会計検査院の調査が必要

井上(一)委員 あまり時間がありませんので、私はここで検査院にお尋ねをしておきたいと思います。
 いまの質疑を聞いていただいて、会計検査院としてのドーム・カナダ、ドーム石油に対する資金供与の事実関係を承知し、あるいは具体的な調査に入られたのかどうか。もし入られてないとするならその調査にぜひ入ってほしい、調査をしてほしいと私は思うのです。このことを調査せずして国の財源確保なんて考えられませんよ。そういう意味で会計検査院の取り組みを私はここで聞いておきたい、こう思います。

磯田会計検査院説明員 ただいま伺いました北極石油株式会社の件につきましては、私ども本年も石油公団担当者からいろいろな話は伺っておりますが、まだ所見をまとめる段階に至っておりません。伺いますと、非常に真剣に取り組まなければならない問題である、そういうふうに承知いたしますので、その点を念頭におきまして今後の検査を進めてまいりたい、そういうふうに考えております。

井上(一)委員 いまのお答えは調査に着手して事実関係を明らかにしていく、こういうことで理解してよろしいでしょうか。

磯田会計検査院説明員 はい、そのように理解していただいて結構でございます。

井上(一)委員 ここで、いままでの質疑のなかで、このプロジェクトに対する通産大臣の所見を聞いておきたいと思います。

宇野国務大臣 事の経緯ならびに現状はいま公団側から説明したとおりで、問答の内容も私、静聴させていただいておりましたが、公団側も遺憾の意を表したと思っております。今後の問題に関しましては、私自身も極力仰せのとおりのような趣旨を踏まえて、成果あるように対処していきたいと考えております。

井上(一)委員 一応この問題は、不明朗な歳出と言うのがいいのか、あるいは甘い歳出、そういうことでの再点検ということと、具体的な私の指摘したこの問題について、今後調査を待ってさらに私はお尋ねを続けたい、こういうふうに思います。


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