『月刊ザ・フナイ』2012年4月号



全体的宇宙像−ホロコスミクス(※1)


藤原 肇(フリーランス・ジャーナリスト/理学博士)




【まえがき】 アインシュタインの相対性理論によって、ビッグバン理論と物理帝国主義の君臨を許し、20世紀は膨張宇膚の仮説が支配し続けた。だが、アインシュタインの仮説は、光速30万q/秒の世界だけであり、無視されたものは「幽霊層の場 Ghost Field」とでも名付ける、モデルが取り残した領域があることに気づく。しかも、アインシュタインの理論には、統一の場の理論としては欠陥があった。
 だから、誰か若い世代がこの欠陥に挑戦して、より包括的な仮説を提示して欲しいと待ったが、20世紀が終わる時期を迎えた。そこで仕方なく、メタ・サイエンス(※2)の立場から、ホロコスミクス(※3)理論を英文でまとめたら、ニューヨークの国際地球環境大学が発行する、『学術論文集・第21号』にそれが掲載された。20世紀最後の年の2000年1月に出た、「新千年紀への期待」と題した特集に、「ホロコスミクス理論」が活字になったのは、縁起に属すめくり合わせかも知れない。
 これは動態幾何学の発想に基づくもので、台湾の数学者の張錦春(ちょうきんしゅん)先生によれば、「統一の場の理論として公理に属し、100年後には世界に広く認知されても、現在の段階ではトポロジカル(形態的)なアプローチは、異端の説として黙殺されることを覚悟せよ」とのことだ。だが、真理は単純明快で、卜−ラスの持つ価値は、急速に世界的な規模で認知が進んでいる。

歴史的な経緯

 伝統的な科学は、ニュートンの法則(※4)が支配している世界である。ニュートンの法則は、直線的な思考という限界の範囲で、運動と慣性を表現した最初の理論であった。
 そして20世紀初頭にはアルバート・アインシュタインが現れ、慣性の法則を、自然法別に基づいて改めて主張した。アインシュタインは、ニュートン力学を部分化し、ニュートン理論を時間との関係でとらえ直し、すこぶる科学的な単純さで定義しなおした。
 アインシュタインは、自然の法則は、時間と空間にどれほど歪(ゆが)みがある状況でも、同一の形式で表現されなければならない、と考えていた。
 「法則はあらゆる座標系から独立していなければならない」(文末の参照文献 #2; Peat, D.; 1991)というわけだ。
 ニュートンのf=maの法則からアインシュタインのe=mc2への移行は、直線から非特異性への、ないしは非線形(※5)への、または曲線的なモデルへの大きな飛躍であった。
 特殊相対性理論は、数学的には、ローレンツ変換(※6)を基礎に成立する。ローレンツ変換は、時問と空間の相対性を証明する数学的な基礎を碇供している。
 ノーベル賞受賞者のリチャード・ファインマン(米1918〜1988)は「うるさ型の人物・放蕩者・ピエロ・純粋な人・超天才・魔術師」など、いくつもの異名を持つ、一風変わった物理学着であった。
 しかしながら、彼は量子力学の発展に大きく貢献した。ファインマンは、ダイソン・フリーマン(英国生まれの米国理論物理・宇宙物理学者。1923〜)に「アインシュタインの偉大な業兢は物理学的な直感から生まれたが、アイシュタインが物理学のイメージで具体的に考えることを止め、数学の方程式の操作に終始するようになつたので、アイシュタインの創造力は停止したのだ」と言った。ダイソンもこの意見に同意した(同 #3; Gleick. J.; 1992)。
 アインシュタインの一般相対性理論の弱点を克服するために、ヴュルナー・ハイゼンベルグ(独1901〜1976)は、彼の不確実性の理論から位相空間の概念を放棄することを提案した。
 その後しばらく経ってから、エルヴィン・シュレーディンガー(オーストリア1887〜1961)は、量子状態を、彼の波動関数で説明した。

直線から曲線へ

 ニュートンの理論から量子力学やアインシュタインの理論への発展を見ると、これは幾何学の直線モデルから曲線モデルへの移行をあらわしていることが分かる。
 直線から曲線モデルへの移行は、複雑系のシステムでいう「カオスの縁(Edge of Chaos)」(※7)で現れる現象が示している。
 鉱物の結晶のフラクタルな(部分と全体が自己相似になっている)成長パターン、心臓の拡大と収縮における血圧の変化、株式や商品先物相場の変動、もっとも小さい粒子から広大な宇宙まで、どのシステムもフィボナッチ数(※8)に支配されている。(#4; Fujii N. & Fujiwara H.;1989)
 フィボナツチ数は、すべてのシステムに存在するダイナミックな法則である。これは、「主体的にあらわれる持続的なパターン」として自己組織化に向かうさまざまな構造と形態をコントロールする宇宙の法則である。
 フィボナッチ数は別名「黄金比」とも呼ばれ、古代エジプトや古代ギリシャの時代にはすでに知られていた。それは神の比率であるとされていたが、これはフィボナッチ数のことであった。
 フィボナッチ数における黄金比の美しさは、次の累乗根と連分数の方程式(図1)によってあらわすことができる。


【図1】黄金式をあらわす方程式。


 フィボナッチ数列(※9)のφ(ファイ)は遺伝子のような演算子(※10)であり、もっとも本質的な数字の「1」の組み合わせだけを許容するフィボナッチ数列の、いわば生命力となっているものである。永遠へと向かうフィボナッチ数列の螺旋(らせん)の運動は、自然と宇宙の秘密を支配する原理である。
 この原理は「ゴーバック・スピンオフ発展」という渦巻き現象を体現している(図2)。
 この発展パターンは、マクロ的には直線的な成長の静的なモデルに依存している。さらなるマクロ的観点からは曲線の動態的なモデルにも依存している(図3)。



【図2】フィボナッチ数列における「ゴーバック・スピンオフ発展」。


【図3】直線と曲線の成長パターン。アインシュタインの相対性理論から100年近くが経過して、量子力学の成果で宇宙や物質についての認識が高まったが、科学の概念においては画期的な変革はないままだ。それは伝統的に物理学が科学の主流をなし、「物」の理学である物理学が非生命観に基づいて、発想の基盤においてリニア(直線)思考をしがちだからだ。しかし、最近になって目覚ましい発達を遂げた生理学は、生命観に基づく「生」の理学であるがゆえに、カービリニア(曲線)思考に至っており、フラクタル構造の一般化へと結びついている。




ホロコスミクスとは

 宇宙のすべてを支配する「直線から曲線への幾何学的な発展の理論化」という壮大な課題を達成するためには、ホロコスミクスの概念をあらわすことのできる「メタ・サイエンス」という用語を使用せざるを得ない(図4)。
 物理学者の使う「宇宙」という概念は意味があまりに限定されている。しかしながら、ホロコスミクスでは「宇宙」というのは、普遍的な宇宙システムのサブシステムでしかないことが明らかになる。
 この概念は超科学的な革命をもたらすはずである。(#5; Chang K & Fujiwara H.; 1994)
 ホロコスミクスの概念では、点は数学的なゼロ次元をあらわしているだけではなく、この特異点の向こう側には広大な「無」が広がっていることを示している。
 さらに、普遍的なシステムの彼岸には「空」が存在する。「無」は道教のカギとなる概念であるし、「空」は仏教哲学の本質である。「現実世界」はこの2つの問に存在している。「無」と「空」の問にある「現実世界」が伝統的な科学の基礎であった。



【図4】ホロコスミクスをあらわした図。数理発想に基づいて概念化したホロコスミクスは、アインシュタインの相対性理論では排除されていた「超高速領域」を含むので、統一の場を考えるためのアプローチとして有効である。



ミンコフスキーの「世界線」と「幽霊層の場」の排除

 1905年、アインシュタインは特殊相対性理論の論文を発表した。その3年後、ハーマン・ミンコフスキー(リトアニア生まれのユダヤ系ドイツ人数学者。1864〜1909)は、「世界線」を「零円錐(ゼロえんすい)」のモデルを用いて定義し、アインシュタインの理論をより明快な概念図であらわした。
 しかし、アインシュタインーミンコフスキーモデルは光速を超える領域の存在を無視した。なぜなら、零円錐(ゼロえんすい)は、光速と同速度であるフォトン(光子=こうし)の世界線に限定されていたからだ。ちなみに、光速は30万km/秒である(図5)。



【図5】過去、現在、未来をあらわす「零円錐(ゼロえんすい)」。


 ホロコスミクスは、「無」と「空」をそれぞれの極線として収縮−拡大運動を行い、フォトンの「世界線」を超えて、「現実世界」と「幽霊層の場」を形成する多次元の概念で構成されている。
 「幽霊層の場」と現実世界は、始まりと終わりがないメビウスの輪(※11)に統合されて考えられるべきである。このメビウスの輪こそ、未発見のものも含めた宇宙すべての「究極の素粒子」を発生させている原理である。




ホロコスミクスの場の数式

 アインシュタインの一般相対性理論は、「場の方程式」を基礎にしている。これは演算子「G」が表わす。これをどの計量テンソル(※12)に適用する場合でも、Gを演算子として扱うことができる。
 するとGAx(アイシュタインテンソル)を得ることができる。この「場の方程式」は以下である。
 GAx=Mx.
 何も存在していない真空では方程式は以下になる。
 GAx=0
 重力場を支配する方程式も存在する。これを記述すると、物理学ではもっとも難解な10個の部分的な方程式になる。(#6; Synge, J.L.;1970)
 しかしながら、「幽霊層の場」には「場の方程式」は適用できない。「幽霊層の場」は自然の広大さそのものだからである。
 ここでは、メビウスの輪の不思議と統一性の特異点を見ることができる。「無」と「空」の間に発見できる現実世界は、以下のように表現できるホロコスミクスを構成する。
 【図6】は、ホロコスミクスの無限な発展を説明している。これは宇宙の基本原理にかかわる思想である。この原理こそ、宇宙の謎の法則を支配する原理である。


【図6】ホロコスミクスの無限な発展をあらわす式。

 しかし、その解明にはさらに高度な幾何学化を必要としたため、アイシュタインはこの分野を完成することができなかった。
 位相(※13)的で曲線的なアプローチは、21世紀の幾何学を概念化するためのもっとも強力なツールである。
 この種の幾何学は、哲学者であり数学者でもあったライプニッツ(独1646〜1716)によると、「もっとも偉大な幾何学者であるデカルト(仏1596〜1650)も無視した」ものだという。

宇宙構造のもっとも単純明快なモデル

 現代数学は、位相的なアプローチこそ、われわれの思考を零と無限を超えて拡張できる唯一の方法論であるとの結論に達した。
 位相幾何学(※14)のもっとも知られた球体モデルはトーラス(円環体)である。円環体は、相互に変換可能な幾何学的な表面を持つドーナツ状の形である。
 しかしながら、これは、「ストレンジアトラクター(※15)」を持つ複雑系のシステムでは、円環体の表面は、境界と終わりのないディテールを持つ、永遠の次元に置き換わる。
 メタ・サイエンスの高度な幾何学は、ホロコスミクスをすばらしい幾何学的な構造であらわしてくれる。
 【図7】は、宇宙構造のもっとも単純明快なモデルである。
 これは宇宙の統一性をもっともよくあらわすことができるので、アインシュタインはこうしたモデルを欲しがった。これこそライプニッツをして「宇宙の原理のもっとも単純な形式は、いにしえのアジアの賢者の言葉にある」と言わしめたものだ(図8)。
 修道士の友人から易経(えききょう)(※17)の英知(変化の本質の原理)を教えられたライプニッツは、東洋と西洋の叡智(えいち)を統合する高次のレベルの理論としてまとめたがった。



【図7】宇宙構造のもっとも単純明快なモデルである、ホロコスミクスのトーラス変換。これは、【図4】において平面図法であらわしたホロコスミクスを立体化して、円環体(トーラス)の大宇宙図になる。


【図8】円環体(トーラス)の宇宙モデルと太極(たいち)図。円環体のトーラスは、ブラックホールとホワイトホール(※16)をもつ太極(たいち)図となり、多次元モデルをあらわした最先端科学と易の宇宙観との融合に結びつく。しかも、太極図における陰陽転換の動態パターンは、太陽表面でのフレアや流体の渦巻きに共通した「対数螺旋」に連なった運動をも示している。



結論

 情報革命が起こつている20世紀から21世紀の転換点では、このような理論はあまりに重要であり、メタ・サイエンスの探究であるホロコスミクスは、この大きな課題を達成するには最高の原理である。
 ニュートンの法則とアインシュタインの相対性理論を成功裏に統合するためには、論理学者、数学者であり哲学者、バートランド・ラッセル(英1872〜1970)の「人間の知性化」に関する先端的な思想(※18)に関わらなければならない。
 そしていま、われわれは、この情報開示を「人類への貢献」とすべく、16世紀のイギリスにおいて、学問を確固たる科学的実証の手続きによって体系化しようと試みた最初の思想家、フランシス・ベーコン(英1561〜1626)が体験したような発見の興奮を味わっているのだ。


【さいごに】 多層構造でできたホロコスミクスは、基盤にあるのが「フィボナッチ数列による法則の支配」であり、立体的には「卜−ラス」の概念に示されるような「外が内になり内が外になるメカニズムになっている。
 20世紀の冒頭に生まれた相対性理論の本質は、ニュートン力学を部分化したものであった。 一方、20世紀の最後に登場したホロコスミクス理論は、アインシュタインが触れなかった光速30万qの枠外に、「幽霊層の場Ghost Field」の存在領域を規定したことで、究極的に宇宙が卜−ラス体(三次元多様体、輪環体、円環体)であることを示すものである。
 「幽霊層の場Ghost Field」すなわち、「無」と「空」を含むこの統一の場の理論は、立体的にあらわすと、卜−ラス体となり、ブラックホールとホワイトホールを含み、易経における太極図がそこに出現している。

【縁起】……ところで、この論文が掲載されたIEEU(国際地球環境大学)の紀要は、全世界の一流大学の図書館を始め、ノーベル賞受賞者たちに送られたので、読んだ人もきっと多いに違いない。だが、日本語訳が未だなかったために、日本人はその存在を知らない。だから、編集部が挑戦して試みた日本語訳を読んで、より若い世代の日本人の中から、より良い論文を書く人が現れて、新仮説の輩出に役立てば嬉しい限りだ。
 奥義を解説するような仕事は、若い世代に属す人がやることであり、馬齢を重ねた私の出る幕ではなく、乗り越えの踏み石になるだけで満足だ。ただ、この論文には数少ないが引用論文があり、『賢者の石 The Philosopher's Stone』、『天才 Genius』、『関係性について Talking about Relativity』などの著書は、解説書として古典的な存在だ。だから、物理学や数学の専門家が翻訳や監修を試みた、日本語訳の本が出ているはずだ。しかも、専門用語や論証の記述の訳に当たり、本来それらを参照することが、国際的な礼儀でもあるので、そういった配慮をされたらよい。
 蛇足かも知れないが、この論文を書いた後で行われた、2000年1月の台湾における会議での講演で、この考え方を更に発展させて、「21世紀型の高次元発想へのアプローチと人材育成のノウハウ」と題したものを発表した。これは中国語に訳され配布されたが、私の著書の読者たちが運営している「宇宙巡礼」という名のホームページで、アーカイブに相当する「記事」の欄に、その草稿を密かに埋め込んだ。ところが、それをヒカルランドの小暮周吾さんが発掘して、『生命知の殿堂』 の巻末に、「資料」として付けてしまった。そのため、「ホロコスミクス Holocosmics」の筆者の手による、日本語による記述に近い形のものが、『生命知の殿堂』の中に存在している。
 秘伝に属すものは教えられるのではなく、自ら発見して知るべきだと考える私は、50年くらい後に見つける人が出たら、それで良いと密かに思っていた。 だが、この目論見(もくろみ)は見事にはずれ、小暮さんの着眼の良さのために、謎解きのヒントが公表されたので、卜−ラスの秘密のへ−ルが剥(は)がれた。
 それをいち早く読み取っていれば、「ユウレカ!!」(※19)の快楽を満喫できるのに、多くの人は『生命知の殿堂』を読まず、カミトロニクス(※20)の威力も知らないから、教えられてから気づ<ので遅れを取る。要するに、日本人は幾らヒントが目の前にあっても、想像力が閃(ひらめ)く回路が眠っていて、どうしても後追いばかりで開拓者になれない。それが発信より受信に満足し、翻訳文化が殷賑(いんしん)(※21)を極める時代精神を生み、舶来崇拝から脱却できないのだ。
 「フェルマーの最終定理」に挑んだ時に、「谷山・志村予想」を生んだ日本だが、漢字も読めない男が首相を名乗り、泥鱈(どじょう)のノウミソが首相の椅子に座る時代だ。テレビがお笑い番組を垂れ流し、学生の思考能力が急速に劣化して、知的怠慢が支配しているために、日本人は『スライヴ Thrive』のような作品も作れず、教えられて知る国になり果てた。
 東京も大阪も思考力が限りなく点に近い、アーカイックな頭脳の首長に率いられて、「日の丸」の前での硬直を美と錯覚し、イニシエーションの儀式を狂いの場にしている。歴史を古層に遡行(そこう)するのではなく、帝王学である幾何の発想に習熟すれば、円は球に転換して力の湧出を生み、日本人は世界に雄飛できるというのに……。
 卜−ラスを透視し現状を乗り越えて、思考停止状態から自らを解き放てば、亡国日本から脱却の第一歩になるし、新しい地平が眼前に開くのである。◎




注(※)

※1 原題は、Holocosmics:Beyond the new horizon of a united theory in the Meta-Sciences
初出は、Bulletin of the lnternational Earth Enviroment University,(IEEU) Volume 21, January 2000 issue(2000年1月発行、ニューヨークの国際地球環境大学「学術論文集 第21号−新千年紀への期待 特集」)。
この英語論文を編集部にて翻訳、一部加筆のうえ、藤原肇先生の御了解をいただいて掲載させていただきました。

※2 メタ・サイエンス:ニュートン力学、アインシュタイン理論を基盤にした現代科学を超えた高次の科学のこと。
メタ(meta〜)とは「高次な」「超」「間の」「を含んだ」の意をあらわすギリシャ語起源の接頭語。

※3 ホロコスミクス:全体的、包括的な宇宙像のこと。ホロ(holo〜)とは「全体の、すべての(whole)」をあらわす接頭語。

※4 ニュートンの法則:物体の運動を表した3つの法則。
〈1〉慣性の法則/すべての物体はその状態を変化させようとする外力が働かない限り、永久に現状を保ち続ける。〈2〉力の定義/物体の加速度は物体に作用する力に比例し、物体の質量に反比例する。(F=ma/F:外力、m:物体の質量、a:物体の加速度)〈3〉作用・反作用の法則/物体が他の物体に力を及ぼす時、その物体は同じ大きさの反対向きの力を他方の物体から受けている。

※5 非線形:系の状態を任意に変えたとき、その変化に対する系の応答が、変化に比例する状態あるいは現象。直線的に変化を予測できない場合を「非線形」であると言う。

※6 ローレンツ変換:2つの慣性系間の座標(時間座標と空間座標)を結びつける線形変換で、電磁気学と古典力学間の矛盾を回避するために、アイルランドのジョセフ・ラーマー(1897年)とオランダのヘンドリック・アントーン・ローレンツ(1899年、1904年)により提案された。

※7 物理現象において、流体と固体とその間にある「相転移」の状態に相当する現象のこと。

※8 フィボナッチ数:イタリアの数学者レオナルド・フィボナッチにちなんで名付けられた数。 n番目のフィボナッチ数列をFnで表すと、F0=0, F1=1, Fn+2=Fn+Fn+1(n≧0)で定義される。最初の2項は0,1と定義され、以後どの項もその前の2つの項の和となっている。すなわち、0,1,1,2,3,5,8,13,21,34,55,89,144,233,,377,610,987,…と続いていく。1202年にフィボナッチが発行した「算盤の書」に記載されたが、古くはインドの数学書にも記載されていた。

※9 フィボナッチ数列の一般項は次の式で表される。

ただし、

は黄金比。
この式は1843年にビネが発表した。

※10 演算子:演算をあらわす記号・符牒。nと3の和を表す式「n+3」において、+は演算子。

※11 メビウスの輪:帯状の長方形の片方の端を180度ひねり、他方の端に貼り合わせた形状の図形のこと。

※12 計量テンソル:テンソルとは、線形的な量または線形的な幾何概念を一般化したもので、1846年にアイルランド生まれのイギリスの数学者・物理学着であったウイリアム・ローワン・ハミルトン(1805〜65)によって導入され、1915年頃アインシュタインの一般相対性理論の導入によって広く知られるようになった。計量テンソルとは、リーマン幾何学(微分幾何学の一分野)において、空間内の距離と角度を定義する、階数(rank)2のテンソル。

※13 位相:距離・角度・時間といった、ある性質や基準によって、「あるもの」と「あるもの」の違いを測るルール。

※14 位相幾何学(topologyトポロジー):ギリシャ語のトポス(Topos)とロゴス(Logos)の合成に由来するもので、直訳すれば「位置の研究・学問」のこと。

※15 ストレンジアトラクター(strange attractor):アトラクターとは、ある力学系がそこに向かって時間発展する集合のこと。非整数次元のアトラクターやカオス理論でしか振る舞いを説明できないアトラクターを「ストレンジ(Strange)アトラクター」という。

※16 ホワイトホール:ブラックホールが物質を再び外部へ逃さずにすべてを呑み込む領域であるのに対して、ホワイトホールは物質を放出する領域のこと。

※17 易経:古代中国の占筮(せんせい)(和い竹を使用する占い)の書で、符号(シンボル)を用いて状態の変遷や変化の予測を体系化した、古代中国の哲学・宇宙観の集大成。陰陽の元素対立と統合によって万物変化の法則を説く。

※18 ラッセルの思想:第1次世界大戦から活発に社会的な発言や著作を出版。第2次世界大戦直後には世界政府樹立とそれによる平和維持をめざした。1955年、核廃絶を主張した「ラッセル=アインシュタイン宣言」を発表。ベトナム戦争に対しても厳しい批判行動を展開するなど97歳でこの世を去る直前まで精力的に活動した。

※19 ユウレカ:古代ギリシャの数学者・発明家のアルキメデスが、ひらめいた時に叫んだ言葉。「わかったぞ」「私は見つけた」の意である。

※20 カミトロニクス:従来の紙媒体(書籍など)と、新しく広まっている電子メディアの両方を駆使したもの。書籍の中に出てきた内容を、電子メディアでさらにわかりやすく詳細を解説するという方法が可能になる。

※21 殷賑:活気があって、にぎやかなこと。




− 参照文献 −

1.Einstein, Atbert.0n the electrodynamics of Moving Bodies; Annalen der Physik 17,1905.Translated by W.Perritt&G.B.Joffeery.The principle of Relativity; Dover Publications lnc., NY, 1952.

2.Peat,David F.The Philosopher's stone; Bantam Books,New York,1991.

3.Gleick, James. Genius; Vintage Book, NY, 1992.

4.Fujii, Naoharu&Fujiwara, Hajime.lnter-Brain Fantasy(Japanese Title 'KannoGenso'); Toko-Shoin, Tokyo, 1988.

5.Chang, Kingshung&Fujiwara, Hajime.Future Wisdom of Meta-Science(Japanese/Chinese Titte 'Uchu Junrei'); Tomeisha, Tokyo, 1993 and Soiryoku Press, Taipei, 1997.

6.Synge, J. L. Talking about Relativity; North-Holland Publishing Co., 1970.


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