『財界 にっぽん』 2004.01月号

特別対談



アフガンとイラクを軍事攻略したアメリカの秘められた意図を探る(上)
――謀略史観の適用で見たアジアの脊梁山岳地帯の地政学


アーサー大本(アプライド・アカウンタンシー社長、在ロス)
藤原肇(フリーランス・ジャーナリスト、在パーム・スプリングス)




コンピュータの駆使で何でもやれる時代

藤原 大本さんは長らくロスで会計事務所を経営して、その傍らに権力者が行う秘密計画についての調査を行い、謀略史観で世界を考えるエキスパートとして知られているが、あなたは確か早稲田大学の理工学部を卒業したエンジニアですね。どうして会計事務所の経営を始めたのですか。
大本 私が出た学部が一応は工業経営学科だが、日本の大学は授業料さえ納めれば幾らでも単位が取れたので、工学部の学生として色んな実験をやっただけでなく、哲学とか経済学や会社設立法まで勉強し、渡米して南カリフォルニア大学でMBAを終えて、コンピュータ会社を経営したわけです。コンピュー夕を自在に使えるようになったお陰で、情報を取ることは至って簡単になったし、会計や給料の自動支払いシステムを作ってからは、計理会社の経営が簡単に機能するようになりました。また、暇に任せて歴史が持つ謎の世界を調べたお陰で、裏の世界の情報に詳しい人たちと親しくなり、特殊な情報を扱いなれた人々とつきあっているうちに、秘密情報の取材が道楽になってしまったから、時どき講演したりするようになったわけです。
藤原 面白い入生を満喫しているようですが、謀略史観には胡散臭いものが多いので、眉唾だと疑い深い目で眺められることも多く、信用の点で危うい立場に立つことも多いでしょう。
大本 でも、根がエンジニアだから新しい技術だけでなく、科学の先端知識を基に古代技術の再発見を試みて、時代がどう動いていくかを知ることは、知的な好奇心を満足させるだけでなく、面白い人との出会いまでも作るのですよ。
藤原 そこで今日は疑問の多い911事件に関連して、それに続いてアメリカ政府が無理やりに強行した、アフガン戦争とイラク侵略戦争の背景に、一体なにがあったのかという点について、普通のメディアには出ていない議論をしたいと思います。私は科学者だから常に懐疑精神を働かせ、謀略史観には疑問を突きつけるので、あなたの自尊心を傷つけることを言うかも知れません。でも、ことによると火花の中から閃きが生まれるから、たとえ気に障ることを言っても腹を立てないで、ブレーンストーミングのつもりで相手をして下さい。
大本 藤原さんの批判精神が旺盛なことは有名で、他人が考えない凄い発想をする事を知っているから、ちょっとの批判ではたじろがないつもりです。それに、面白い発想をする人と付き合いながら、その情報がどの程度まで正しいかを調べていると、彼らの多くがCIAやNSA(国家安全保障局)などその筋に関係し、経歴的にも興味深いことが多いのです。中には超能力の訓練を受けたらしく、時計の針を逆回転させる裏技も見せるが、そういった人間を通じて情報リークが行われており、これが意図的な心理操作にもなっているのです。
藤原 情報操作としての公的な秘密のリークとは面白いな…。



タメにする情報と撹乱工作

大本 その内容の六割以上が事実に基づいていて、四割が嘘と撹乱の組み合わせで出来ているので、素人目にはいかにも本当らしく思える。問題は情報漏洩で誰がダメージを受けるかであり、その反対側には利益を得るグループがいるわけで、そこに注目すると構図が見えてきます。ある目的で謀略情報が流れるという点を把握しないと、心理操作の思う壷にはまってしまいます。
藤原 そうなると裏の裏を読まなくてはいけない。その点で日本人は世界的に見て甘い情報感覚の持ち主であり、タメにする撹乱情報に振り回されているし、メディアが情報の裏取りする能力が乏しいから、嘘を本当らしく書いて稼ぐ連中がメディアで人気を集め、CIA情報だと言いふらして得意になっています。
大本 そうですね。たとえば昔NSAにいたとかCIAの高官だったと名乗り、現在はフリーな立場を装う人がいるが、そのほとんどは怪しいと考えるべきです。秘密機関でかつて幹部を歴任したような入が、辞めても関係が無くなるわけではなく、高官ならば一生そこの人間であるから、辞めたので総てを喋れるというわけではありません。政府の秘密組織を辞めるのは口実で、情報収集や分析の部門を離れたにしても、今度は大衆操作の任務に移っただけです。
藤原 辞めても在任中に得た秘密は漏らせないし、漏らせば犯罪だという一札を書いているはずで、国家機密漏洩罪には厳しい処罰があり、情報に関してフリーハンドのはずがありません。
 ところで、911事件の真相は疑惑に包まれたままであり、曖昧な政府発表が一人歩きしているが、果たしてアラブのテロリストの行為かどうかも、分かっていないというのが実情です。事件の直後からどうも不可解だと言われて来たのに、アメリカが国を上げてマスヒステリアに支配され、メディアがそれに圧倒されてしまったので、誰も真相を追及しない状態が続き、変だと言うと謀略史観だと切り捨てられて来た。どうも納得できない点があり過ぎたことは、911事件の三日後にわれわれがロスに集まって、あの事件に関して座談会を試みた時に、ハイジャックがパーフェクトだっただけでなく、WTCビルとペンタゴンに突入した飛行機の操縦が、とても素人の手腕ではないということで、どうも奇妙であるという結論になりましたね。
大本 ビルに飛行機が突っ込んだ映像の印象が、何とも不自然で奇妙だっただけでなく、ビルの崩壊がスムーズ過ぎたために、インプロージョン(体系爆破)ではないかというプロの見解もあり、解釈は実に混乱を極めていました。
藤原 あの会の出席者全員が「同時多発テロ」と喋ったし、日本のメディアはこの言葉一色だっただけでなく、私はその後この言葉を使いまくったので、言葉づかいの面で情報操作に巻き込まれ、日本人全体が洗脳された感じでした。
大本 ロスの日本人は日本の新聞とテレビを見ているから、日本と同じ情報を同時に受け取って影響されるので、NHKの衛星放送が同時多発テロだと喋れば、日本村に住む日本人は全員が信じてしまうのです。
藤原 確かに事件は同時多発の形で起こったが、アメリカ政府の発表どおりテロリストによる攻撃によって、あの事件が起きたという確証はありません。



911事件が示す解明出来ない疑惑

大本 テロリストが遠距離便をハイジャックしたというが、凶器がカッターナイフだと発表されただけで、四機が同じ凶器で脅かされたにしても、全部が成功する確率は非常に低いはずだし、容疑者の証拠は何ら示されていません。しかも、テロだという結論が先走りしただけであり、ブラックボックスは全く公開されておらず、乗客が使った携帯電話の通話記録もないし、ペンタゴンに突入した飛行機は残骸さえ無いので、ミサイルらしいという情報も流れました。
藤原 そういう情報がその後に続ぞくと現れて、アメリカの自作自演だろうという説まであったが、謀略説だと決め付けて葬られています。
大本 WTCビルの南棟と北棟の崩壊が秩序だっていたし、周辺のビルまで崩壊したというのも不思議で、ユダヤ人の犠牲者もほとんどいません。もっと奇妙だったのは炭疽菌事件であり、混乱の中で炭疽菌をばら撒くことで、テロの危機感を盛り上げるつもりだったのに、あの炭疽菌が米軍の保有物だということが、調査報道で明らかになってしまったでしょう。実にお粗末な話でした。
藤原 メリーランド州の細菌戦研究施設のものが、使われたらしいと報道されたために、炭疽菌を使う作戦は打ち止めになった。本当はフセインが持つ生物兵器の脅威を盛り上げ、イラクを叩く口実にする気だったのです。
大本 今回のイラク戦争は表向きの口実としては大量破壊兵器による攻撃を予防するとか、テロヘの報復をするためとか色いろあり、動機としてイラクの石油を支配する米国の野望や、軍産複合体の利益のためなどがあるし、親イスラエル派のネオコンの暗躍も目立ちました。
藤原 ブッシュ政権の幹部の多くはネオコンだし、圧倒的にユダヤ系のアメリカ人が多い上に、911事件後に出来た国土保安省は、英語でホームランド・セキュリティー省(DHS)と呼ぶことになった。この言葉はイスラエル建国の口実になった、バルフォア外相がロスチャイルド男爵宛の手紙に、祖国と言う意味で使われていまして、どうも、シオニスト好みの語感を秘めた用語です。
大本 それも奇妙な一致だが誰も問題にしていませんね。また、先ほど藤原さんが911事件は自作自演と言ったが、それを裏付ける証拠が続ぞく見つかっています。その一つで重要だと思えるものに、WTCビルにアメリカン航空の飛行機が激突する場面が、事件の六ヶ月前に民間テレビで放映され、激突を寸前で回避した場面が出た直後に、この連続番組は打ち切りで放映中止でした。ということは、ツインビルに旅客機が激突すると言う話は、事件の前から極秘に練られていた可能性があり、それを感知していた人もいたらしいのです。
藤原 そんな話は初耳だが民間テレビと言うのは、ABCとかNBCあるいはケーブル・テレビなのですか。
大本 沢山の人が見たというのでどこの局か調べているが、その映画のビデオの入手を手配していますから、そのうち詳細が分かるだろうと思います。
藤原 どうして一般のメディアがその問題に注目して、大いに騒がないのか実に不思議だと言う気がします。



高度な操作技術や遠隔操縦システムを使った可能性

大本 アメリカのメディアはユダヤ系が支配しているので、そういう極秘のタブーが関係していることについては、報道しないのが当たり前だというべきです。問題はGPS(汎地球測位体系)を使った遠隔操作装置なら、パイロット操縦と違い正確に目標に向かうので、あれだけ見事な衝突も実現し得るわけです。
藤原 知人のパイロットの話だと高度な技術が必要であり、秒速ーキロで飛ぶ飛行機をビルに衝突させるのは、飛行機学校で訓練した生徒には難しくて、空軍のトップの熟練パイロットでなければ、とても出来ないことだと言っていました。そんな空軍パイロットがいるのは米英かイスラエルでしょう。
大本 その他にロシアの空軍パイロットも優秀だが、むしろ遠隔操縦装置を使ったと考えるなら、飛行機のどこに装置をつけるかが問題で、GPSのための地図を作りソフトに組み込めば誘導ミサイルと同じで目標に命中します。
藤原 そう言えば興味深い情報がありまして、WTCビルの中にあったある証券投資会社は、財務省の証券全体の七割を扱っていたが、911事件で会社自体が雲散霧消してしまったのに、この問題を誰も取り上げようとしません。アメリカ政府の借金の借用証書を扱う会社がなくなれば、誰が一番得をするかということは重要な鍵であり、これは探偵小説の犯人探しのイロハですよ。
大本 借用証書やデータベースが消えたにしても、どこかにバックアップの記録があるはずだから、それは藤原さんが推理小説の読み過ぎです。むしろ、首都ワシントンを守る防空システムが機能せず、ペンタゴンに飛行機が曲芸的に突っ込んだのに、飛行機の残骸さえもが無いに等しく、どうもミサイルを使ったらしいという噂まで流れたが、その後この点を誰も取り上げていません。
藤原 ジャーナリズムが調査報道をして当然なのに、テロだという前提で犯人探しに熱中しているせいで、事件そのものが迷宮入りになりそうです。
大本 それにしても、このイラク戦争ほど大義名分に欠けたものは無いし、今回のブッシュの行動ほど説得力が不足したものは、過去に前例がないほどの酷さでした。
藤原 先ずはアフガンに攻め込んで基地を作り、続いてイラクの油田地帯の占領により石油を奪い、次にシリアを叩きイスラエルを喜ばせ、最後にイランを抑えてカスピ海とペルシャ湾を結べば、中東の資源権益の制圧が完成します。
大本 石油ビジネスのプロの藤原さんならば、そう考えるのは当然だと思いますが、私はブッシュたちがもっと世論工作に力を入れ、先ずアフガン攻撃で戦争の既成事実を作ってから、中東支配のハルマゲドン計画を実行し、起死回生の経済戦略を企てると予想しました。911事件でWTCビルの崩壊の衝撃は、真珠湾奇襲のイメージと結びつきます。だから、国民がパニックに陥るチャンスを生かして、数千人の犠牲者の報復のために、やられたらやり返すジョン・ウェーン方式を使い、悪人征伐のパターンを再現するわけです。これがブッシュが狙った自作自演劇の筋書きであり、そのためにテレビで何百回も繰り返して、強烈なショックを植付けるのに成功したのです。
藤原 でも、ブッシュにはそんな緻密な頭脳はないですよ。
大本 それはブッシュを背後で操る勢力であり、彼らは大統領選挙の時にフロリダにおいて、負けた選挙を逆転させる工作を実行し、一種のクーデタで大統領を入れ替えました。だから、ケネディ暗殺が20世紀の謎なら、フロリダの逆転選挙は世紀末の謎であり、911事件が21世紀の謎になるのです。これらは一連の迷宮入りになる事件であり、アメリカという国が真相の解明を拒む、絶対に開き得ないパンドラの箱ですよ。大体からしてビン・ラデン家はブッシュのパートナーだったし、オサマにWTCビルのテロをやる力はなく、やったという証拠はどこにもないのに、アメリカ軍はアフガンに戦争を仕掛けています。



精神世界の奥の院としてアフガニスタンの持つ価値

藤原 しかも、アフガンと911事件と直接結びつかないのに、タリバン(神学生)政権を粉砕して軍事占領することで、あそこを支配下に置いたわけです。
大本 アフガン戦争をやった表の理由としては、アルカイダ叩きの他にパイプラインと麻薬があるが、その奥にもっと大きな秘密があって、地政学的に重要であるその核心に相当するものに、思想の世界における役割があるのです。
藤原 精神世界や神秘思想の分野において、アフガンは昔から「山の長老」の支配圏であり、有名になったマザリシャリフの近いバルフの遺跡は、ジンギスカンに破壊される前は文化の中心だったし、イランとアフガンの国境に近いヘラートはスーフィーイズムの中心で、昔から修業の場所に近い仙都でした。
大本 ギリシャやローマの時代から中世に向かう過程で、キリスト教世界が封建制に入ったために、科学も思想も発展がない状態が続き、その時に発展を推進したのが中東地域でした。十字軍がアラブに攻めて行った理由も、この科学技術のノウハウを奪うためであり、それがゴシック建築や黄金分割の思想だったことは、藤原さんの「間脳幻想」に書いてある通りです。
藤原 あなたが仕事にしている会計学にしても、中東に旅して学んだフィボナッチやパッチョーリが、黄金分割や複式簿記として移入したものです。だから、地理学的には砂漠や岩山が君臨しているが、アナトリア高原からヒマラヤ山脈を経てチベットに至る、古地中海が地殻変動で大陸の屋根になった地域は、古代の叡智を伝える神秘文明のセンターです。
大本 その通りですね。
藤原 分かりやすく整理してしまうと、科学の裏側にあるのが宗教であり、この宗教を腑分けすると顕教と密教に区分でき、密教的なものがゾロアスター教やミトラ教として勢力を張り、その影響下に仏教やキリスト教が生まれ、顕教の形で世界宗教に発展したのだと思います。現在の中東はキリスト教の兄弟のイスラム教圏だが、イスラムの奥にはゾロアスター教やミトラ教が潜んでいます。また、神秘的な体質を持つイスラム教がシアー派で、それがスーフィー思想と複雑に絡み合って、イランからアフガンにかけて定着している。しかも、科学の中の化学はアルケミー(錬金術)として、あの辺の山岳地帯で冶金と関係しており、それが西欧の神秘思想の源流になっています。
大本 その考えはアフガン戦争の理解の上で重要です。今の指摘を逆に神秘思想の視点に置いて見れば、人間の深層心理に強い影響を及ぼした、20世紀の三大神秘思想家が関係して来る。それはゲーテに学び人智学を広めたシュタイナー、マンダラと深層心理を結合したユング、スーフィー神秘主義を発掘したグルージェフの三人で、皆がアフガンやチベットを注視しています。
藤原 密教的なものに注目しているのですよ。
大本 シュタイナーはゲーテの神秘主義に関心を持ち、マンダラはチベットが本場だと言われているし、グルージェフはダライラマの家庭教師をやり、チベットからカフカス山脈にかけての地域を旅しています。
藤原 その源流に神智学のプラバッキーがいるし、易経とスーフィー神秘学の源流はシュメール文明であり、メソポタミアは文明と知恵の故郷です。また、本当の知恵は切り売り出来ないから、老師について修業で学び取るものだし、そうした老師があの山岳地域にいて、隠れた本物のノウハウを保持しているのです。秘伝は一子相伝で伝えられるものだし、老師はグルより遥かにレベルが高い人で、カルディアの秘教を伝えるマギ(東方の博士)であり、山中から全世界を見つめている人ですよ。
大本 だから、アフガンを制圧して思想の源流を抑える目的で、スーフィーのサンミューン修道院やクワンジガン集団が潜む、山中の洞窟を徹底破壊するために、地下深部で爆発する特殊誘導弾まで使い、米軍はアフガン攻撃したと言う仮説が、現実味を帯びて納得できるようになります。なぜこの戦争がアフガンとイラクで始まって、これから大変なことになるかを知るには、文明の歴史を鑑にすることが必要になるのです。
(以下、次号に続く)


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